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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

産座に用いる植物について

2010年11月02日
秋田
 森吉山野生鳥獣センターは10月末日を持って今期の開館期間を満了いたしました。開館期間中は多くの方々にご来館いただき誠にありがとうございました。
 なお、森吉山野生鳥獣センターのある森吉山麓高原は全ての施設が今期の開館期間を終えております。一帯ではトイレも使えない状態です。もしお越しの方がおらっしゃいましたらお知りおき下さい。



 さて、昨日に引き続き今期、大潟草原鳥獣保護区にて確認した【オオセッカ】に関する記事です。新鮮さはありませんがご容赦下さい。

 今日は【オオセッカ】の巣に関する話です。
 鳥の巣の中には『産座』と呼ばれる部分があります。大雑把に言えば、読んで字の如く、卵を産み落とす為の座になる部分です。


 今期確認した【オオセッカ】の巣です。巣の中を覗いて見えるのが『産座』と呼ばれる部分だと思っていただいて大きな間違いは無いかと思います。

 【オオセッカ】の巣の『産座』部分は巣のその他の部分に比べて明らかに、その外見が異なっていました。周辺はヨシの羽を積み重ねたような作りをしているのですが『産座』にはかなり細い植物が用いられているのが確認できました。
 繁殖が終わった巣をよく観察すると『産座』はまるで座布団の様に巣の中に置かれていて、この部分だけ別に作ってあつらえたかのように見えました。
 実際には一連の巣作りの中で行っていたはずではありますが、そう見えるほどその他の部分とは異なっていたのです。


 当事務所では植生改善事業の参考としたいと考え【オオセッカ】の巣材の分析を依頼しました。巣には大潟草原内の何の植物のどの部分を使っているのか?その植物は草原内に広く分布しているのか?を調べる為です。
 その調査の結果、『産座』には【チゴザサ】あるいは【クサキビ】という植物の花穂部分が使われている事が解りました。
 

 大潟草原の特別保護地区内に自生している【チゴザサ】と【クサキビ】です。


 先端の花穂部分が見にくいかも知れませんので、数株抜き取ってサンプル撮影しました。コンベックスも当てていますので大きさもお分かりになるかと思います。

 この植物を撮影したのはつい先日の話ですが、【オオセッカ】が繁殖期を迎える6月頃にはこれらの植物はまだ花を付ける前で、当然ながら当年分の花穂というのは存在しません。と言うことは【オオセッカ】は昨年花を付けて枯れたものを拾い集めて『産座』として使っていると言うことになります。



 6月に撮影した巣材を運ぶ【オオセッカ】ですが、咥えているのは『産座』となる花穂です。よく見ると確かに枯れているようですよね??


 こんな事実も地道に観察して撮影して調べてみて、専門家の助けも頂いてようやく点と点が繋がり「そうだったのか!!」とスッキリした気持ちになります。
 野鳥達はどうやって、何を使って巣を作っているのか?或いは・・・彼らが繁殖するにはどんな環境が必要なのか?逆にどんな環境があれば野鳥達の繁殖活動が行われるのか?そんな視点も必要なようです。



 またまた長くなりましたが・・・以上報告でした。