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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

ある実生

2010年09月16日
秋田
 今日の秋田市内は昼頃から雨が降り出し、暑さが一段落しています。これから一雨毎にどんどん涼しくなることでしょう。来週にはお彼岸ですもんね?暑さも彼岸まで・・・となるのでしょうか??

 

 先日、地元で活動するNPOの方から輪切りにしたブナの木を頂きました。その年輪をざっと見て250年を越えていました。また森吉山野生鳥獣センターの周囲にベンチ代わりに杉を輪切りにしたものを置いています。

 ブナもスギもこれまでにこの日記で実生を取り上げて紹介してきました。生まれたばかりの小さな木の芽はやがてこの様な大木になるとは想像しがたいほど儚い存在のように感じますが、確かにその中から数十、数百年後の未来まで生き延びて森の大木となっているものがあるはずです。


 最近、多くの実生を見るにつけ、生まれて1年経っていない実生は、儚い物に見えて実は溢れんばかりの生命力を持っているのだと思うようになりました。かつて見た実生が成長している姿に触れたからでしょうか?



 さて、そんな折り、小又峡の遊歩道でこんな実生を見つけました。
 

 私の日記には初登場かも知れません。何の実生なのか?分かりますか。地面にたくさん葉が落ちているのでお分かりになるかも知れませんね。


 その樹の肌です。森吉の渓谷沿いの稜線ではお馴染みの樹種です。


 その樹の葉です。もうお分かりですね?森吉ではこの樹を【ネズコ】と呼びます。図鑑では【クロベ】と書かれているはずです。


 この【ネズコ】もやがて大木に成長する樹です。周りにはまだまだたくさんの実生がありました。かつて儚いものに感じていた実生を生命力に溢れた存在と感じるようになった現在、そのたくさんの実生を見て自分まで元気を貰えるような気がしてきます。


 実際には、北東北の厳しい自然の中で生き、更には厳しい生存競争があり、その上歩道として利用されている等、この実生達が大木となる可能性は僅かなものかも知れません。それでもやがて大木となる姿を思い描くのは私だけの空想の世界でしょうか??


 この実生の側にある樹には『ヒノキアスナロ』と書かれた看板が添えられています。私はどうして【ネズコ】と書かないんだろうか?せめて【クロベ】と書いてくれたらいいのにと思ったのですが・・・ある方から聞いたこの話を思い出してこれで良いんだな。と思い直しました。

 その話というのは・・・「昔は子供が生まれると山にこの樹(【ネズコ】のこと)を植えたんだよ。それはね、子供がスクスクと成長するように願って植えるんだけど、この樹はヒノキアスナロと言って、大木に育つ樹だからそれにあやかって『大きな桧に明日なろう!!』」っていう意味があるんだよ。」というものです。

 看板を掲げた人もそんな願いを込めて、敢えてヒノキアスナロとしたのかも知れませんね。



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