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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

~日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前~

2010年08月27日
十和田
【高山に棲む飛べないバッタと旅をする蝶】

日本全国に分布しているフキバッタの仲間は翅が退化していて飛ぶことができません。長距離を移動できないことから地域ごとに種類が分化して、その地域にしか棲んでいない地域固有種が多く生れたと考えられています。

八甲田山に棲んでいるハヤチネフキバッタは気温の低い高山で生活しています。八甲田山の涼しい気候がこのバッタにとっては棲みやすい環境なのです。
では、地球温暖化で気温が上昇してしまったらどうなるのでしょうか?
このバッタには翅が生えていないので、涼しい北海道の山などに飛んで移動することはできません。
つまり、涼しい場所を求めて標高の高い所に移動しなければならず、生育環境は狭まります。気温が2℃上昇した場合、単純に計算すると生息のための条件が約300m上昇します。これによって、北八甲田においては生息域がおよそ3分の1になると予想されます。

ミヤマリンドウとハヤチネフキバッタ
(リンドウ科リンドウ属/バッタ科フキバッタ亜科ハヤチネフキバッタ属)

八甲田の高地にはアサギマダラという旅をする蝶も棲んでいます。この蝶は夏の期間を涼しい高原などで過ごし、秋になると温かい九州地方などに移動すると言われています。この蝶の生態にはまだ謎が多く、八甲田に生息している個体がどの程度移動しているのかも解明されていないようです。

オニアザミとアサギマダラ
(キク科アザミ属/タテハチョウ科マダラチョウ亜科アサギマダラ属)


ハヤチネフキバッタやアサギマダラなど限られた場所でしか生活できない生き物達は、わずかな気候変動や生態系の変化で突然姿を消してしまう可能性があります。
多様な生態系を保全し、ハヤチネフキバッタやアサギマダラがいつまでも八甲田山に生息できるよう、私たちは何をすべきかを一緒に考えてみませんか?