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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

「黒い物体」の正体

2010年07月28日
秋田
 昨日の日記があのような終わり方をしたので近日中には続編を書かないといけないなと思っていました。実は今日の日記は他の話題を用意していたのですが、このところ秋田県内での熊の目撃情報が相次いでいたり、それに関する報道もありますので、この日記でも現状をお伝えしようと思い、今日直ぐに書くことにしました。


 もう既に皆さんお分かりの通り「黒い物体」の正体は【ツキノワグマ】です。もちろん物体ではありません、森の中で一際大きな存在感を持っている動物です。

 この撮影の直前に激しい雨が降っていました。しかしその雨は通り雨だったようで直ぐに上がりました。聞くところに寄るとかなり激しく屋根を叩いていたそうですからいわゆる「ゲリラ豪雨」だったのかも知れません。よく見ると【ツキノワグマ】の体毛はびしょ濡れでした。激しい雨の間、何処かで雨が過ぎるのを待っていたのかも知れません。行動を中断するくらいの雨だったので・・・。

 ようやく雨が上がって日も差してきたので、やおら起き上がって餌を探しに出歩いているところへ私がやって来たのでしょう。どうやらお腹が空いていたのか?【ツキノワグマ】は地面付近にある食べ物を一心に貪っていました。 【ツキノワグマ】が食べていたのは今、森吉山麓高原で真っ赤に色づいて食べ頃になっているエビガライチゴなどの野いちごでした。この場所にもエビガライチゴがあります。甘くて美味しい野いちごを私の存在を気にしながらも貪るように食べていました。

 少し前、【ツキノワグマ】達は豊富にあるタケノコを食べていたようです。各登山道にはそれを裏付ける糞が大量に落ちていました。今はタケノコのシーズンも終わって木の実のシーズンとなってきました。その最初が野いちごというわけです。ですからこの時期、山に入るときには野いちごが自生している場所や木の実が食べ頃になっている場所では特に注意が必要です。例年この時期になると森吉山野生鳥獣センター周辺ではエビガライチゴの自生している場所での目撃情報が多くなります。森吉山麓高原の場合、エビガライチゴが見られるのは森林再生事業が行われているエリアに多く、その他は林道や登山道周辺などですから樹木が少ない草地など日当たりの良い場所を好む植物のようです。

 そんな場所ならば見通しもイイから直ぐに熊を見つけられるんじゃないか?と思ってしまいますが・・・それは全くの早合点です。
 この↓写真の熊は立派な成獣で体躯も立派なものでした。動物園や熊牧場などで飼育されている【ツキノワグマ】と比べても最大級だったと思います。そんな体格の【ツキノワグマ】ですが4本足で歩いているときにはススキやヨモギなどの草に隠れてほぼ見えませんでした。これが伏せていたり身を屈めていたら更に見えにくくなります。ですから見通しの良い場所だからといって安心するのは非常にキケンです!!!!!しっかりとした対策をなさって下さい。



 ところで・・昨日の写真にも写っていましたがこの【ツキノワグマ】にはかなり多くの「アブ」が付いてます。頭の上にも・・・


 そして胴体にもこんなに・・・
 アブは黒い物に近寄ってくる習性があるなどと言われますがそれを裏付けているかのようです。全身黒い体毛の【ツキノワグマ】のそれこそ全身にアブがいます。
 これを見るとアブが発生している時期は黒っぽい色の服装は止めた方が良いな。と思いますよね?


 私は巡視などの業務中ひとりでの行動が多いのですが、白っぽい洋服でアブ対策をし、熊鈴などを取り付けて【ツキノワグマ】対策に万全を期したいと思います。