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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

幻の滝と井戸岳(北八甲田巡視No.2)

2010年05月20日
十和田
5月11日に酸ヶ湯温泉から毛無岱を経由して井戸岳(1520m)までのコースを巡視してきました。
当日の十和田湖の空模様は曇でしたが、標高の高い場所では恐らく霧がかかっているだろうという予測のもと酸ヶ湯温泉にむけて出発しました。その予想通り蔦温泉周辺から急に霧がかかりはじめ、標高をあげるごとに視界はどんどん悪くなっていきます。もっとも視界の悪かった猿倉温泉~傘松峠付近では10m先が何とか見通せる程度で、峠道の運転は困難を極めました。
この視界ではさすがに入山するのを躊躇しましたが、とりあえず酸ヶ湯まで行って様子だけでも見ようと思い、突然現れる急カーブと対向車に注意しながら目的地を目指しました。
すると、傘松峠を越えた瞬間に霧が薄くなり始め、酸ヶ湯温泉に着くころには青空が広がっていました。つまり「やませ」だったわけです。
東からの湿った空気団が八甲田を昇り、標高とともに気温が下がることで霧が発生して水滴になります。その空気団が峠を越えて下降しはじめると今度は温度が上がり、霧が消えます。酸ヶ湯から傘松峠方面を望むと、雲が峠を越えた瞬間に次々と消えていく様子がはっきりと確認できました。
酸ヶ湯温泉裏の急斜面は部分的に登山道が見え始めていましたが、登りきって平坦な部分に出ると登山道はまだ完全に雪に覆われていました。夏道は下毛無岱を通りますが、本日は下毛無岱をショートカットして、上毛無岱に登る急な木の階段の地点を目指して歩きました。
そこで、おそらくこの時期にしか現れないものに出くわしました。
上毛無岱から流れ落ちる幾重にも連なった滝を発見したのです。高低差はゆうに15mはあるかと思われます。湿原からの豊富な雪解け水が勢いよく落下して、雪に開いた穴に吸い込まれていく様子は非常に迫力がありました。夏場は道が無くなるのでこのポイントまで行けません。何よりも水量が少なくなるので滝になっていない可能性もあります。冬も雪に埋もれているか、水が流れていないと思われます。

毛無岱から流れ落ちる滝

上毛無岱から大岳避難小屋までの登山道上は部分的に木道も見え始めており、花が咲き始める季節が待ち遠しいです。

上毛無岱

大岳避難小屋から井戸岳まではほぼ登山道が出ています。井戸岳山頂から田茂萢岳への稜線にもほとんど雪は無く、ロープウェイを利用して田茂萢岳から縦走してきたと見られる登山者の方が数名いらっしゃいました。
本日のような天候の場合には山の西側が晴天に恵まれていましたが、気圧配置が逆になれば状況も正反対になる可能性があります。山の天気は変わりやすいといいますが、局地的にみても非常に変化があることが良く分かりました。
刻々と変わる山の天候に注意しながら十分な装備と行動時間をもって登山を楽しんでいただきたいと思います。
また、この時期には積雪深が浅いため特に湿原部では歩道の踏み外しによる貴重な湿原植生の荒廃を招くおそれがあります。植生の保護に十分注意していただきますようご協力お願いいたします。

井戸岳山頂