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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

暴風雪のち青空

2009年02月18日
秋田
 今日は24節季の一つ「雨水」です。雪が雨に変わり、水辺の氷が溶けだす頃にあたるということですが、秋田はこれまでの春めいた陽気から真冬に逆戻り・・・天気予報はこの先一週間ずらっと雪マークが並びました。


 昨日の大潟村は昼前まで強い風に雪が交じり、視界が悪くて生息調査に手を焼いていました。いつもなら見渡せる水辺も対岸がよく見えないほど・・・

 調査中、私の頭上をたくさんの【マガン】【ヒシクイ】の群れが通過する場面がありました。彼らは塒の方向から餌場へ向かっているようでしたが風が強すぎてなかなか思うように進んでいません・・・遠くに見える【マガン】の群れはキレイなV字編隊を組んで飛んでいるのですが、その位置がなかなか移動しません。皆さんも風が強い日にトビやカラスたちが向かい風に逆らいながら飛んでいてなかなか前に進めずに苦労している様子を見たことがあるかも知れませんが、まさにそんな感じでした。
 近くを飛んでいる【マガン】もスローモーションか静止画を見ているかのようで、これほど【マガン】の腹部を間近でじっくり見たことはありません。こうして書くと「それってシャッターチャンスじゃない?」と思われそうですが、車を揺らすほどの猛烈な吹雪はカメラを揺らしまくり、カメラを構えることも出来ませんでしたが、辛うじて見られる写真が↓これです。


 口を開けて飛んだら苦しいんじゃないか?なんて思うのですが・・・(先頭を飛ぶ【マガン】)その表情からも必死さが伝わってくるようです。


 吹雪の中ではありましたがじっくり観察できました。【マガン】ってキレイな姿勢で飛ぶんですね~?

 ちなみに気象庁のHPで確認したところ、昨日の午前中に「大潟」の観測所で観測された風は3~5m/secというものでした。これを時速に直すと10.8~18.0km/hとなります。そして【マガン】は(その状況によって異なるでしょうが)80km~120km/hの早さでで飛ぶことが出来るそうです。
 仮にこの写真を撮影した時、【マガン】達が真っ正面から向かい風を受けていたとしたら、<風10.8~18.0km/h>に対して<【マガン】の飛翔力80~180km/h>ですから、少なくとも60km/h台の後半の速度で飛べる計算が成り立ちますし、彼らの能力からして時に押し戻されるほどの風ではないはずですが、それでもほとんど進まないと言っていいくらいでした。
 上空の風はもっともっと強かったと言うことでしょうか?気象台の発表する「風の強さ」は10分間の平均値を現しているそうですから、ある時点の「もの凄い風」も平均されてしまっていたのかも知れません。【マガン】がその能力をフルに発揮していたとしたらその10倍の強さの風がその時の上空には吹いていたことになりますから・・・私の実感としてはもっともっと強かったように感じますし、当時は暴風雪警報が発令中でした。(現地の暴風雪警報発令の目安となる風の強さは18m/sec=64.8km/h以上)


 その後、昼頃になって吹雪は収まり、青空が覗いてきました。あまりの急激な変化に危うく「雪眼」になるところでしたが【マガン】達は随分と楽に移動できるようになったようで青空をバックにスムーズな飛翔を見せてくれました。やはりこちらが絵になりますね~。


 スピードについて行けず後ろ姿になってしまいました・・・。



 そう言えば・・普段【マガン】や【ヒシクイ】が餌場を移動したり、餌場から塒へ戻る時など、車で移動している私を楽々と追い越していきますもんね~。彼らは実は相当速いスピードで移動していたんです。←「う~ん妙に納得!」