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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

動き回ったのち、一転

2009年01月19日
秋田
 先週まとまった雪が降った秋田県地方は山も田んぼもすっぽりと雪に覆われ白い景色が広がっています。
 大潟村の場合、雪も勿論ですが、周囲をぐるっと取り囲んでいる承水路(旧八郎潟の残存部分)も結氷していて寒々しい光景となっていました。
 そういう状況下の大潟村では、餌を得るのも厳しく、難儀している野鳥の姿を多く見かけます。木の実や草の実を食べる小鳥たちは活発に動き回るのですが、ガンやハクチョウたちは僅かな採餌可能地でひしめき合うようにして採餌している姿を見かけました。

 【タンチョウ】も餌の確保に難儀しているようでした。鳥獣保護区の管理員さんによれば、いつも通りに塒を立った【タンチョウ】はいつもの通り採餌地へ向かったそうですが、降りた場所は水路も田んぼも一面の雪でパックされていたそうです。それでもいつものように歩き回って餌探しを始めたそうです。
 その後、私が回った時にはいつも【タンチョウ】が観察されるエリアに姿を見つける事は出来ませんでした。「だったらあっちかな?」と他の場所へも行きましたがそこにも姿はありませんでしたが、「このあたりから姿が見えないってことは、きっと○○で餌を採ってるんだろうな?」と思いこんで次の観察場所へと向かい、巡視を続けました。


 昼食後、何の気なしに管理棟の2階へ上がってみると結氷した池の上に大きな鳥の姿を見つけました↓。【タンチョウ】です。



 これまで【タンチョウ】は承水路を塒とし、その周囲の田んぼや水路、大豆畑などを採餌地としていて限られた範囲の移動しかしていなかったのですが、この日は余程餌の確保に困ったのでしょうか?随分と行動範囲を広げていたようです。



 保護区の水辺に降り立った【タンチョウ】はシャーベット状になった氷の上を歩き回って食べ物を探しているようでした。



 シャーベット状の氷に嘴を差し込んだり↑、ヒメガマの穂を突いてみたり、と「なにか食べられる物はないか?」と餌を探す必死な様相が見えるようでした。

 暫く、池の上で餌探しをしていましたが、「ここには無い・・」と思ったのかまた別の場所へと飛び立ってしまいました。その後の行動はつかめていないのですが、想像するに水辺の結氷と一面の積雪で餌を採れなくなった【タンチョウ】は餌が採れそうな場所を探してあちこち飛び回っていたのではないでしょうか?これまでの観察で【タンチョウ】の食事量と頻度には驚かされていました。この時の大潟には彼のお腹を満たすだけの食糧を確保できる場所は無かったものと思われます。
 この時、飛び去る【タンチョウ】を見て、こんな日が続けば何処か別の場所へ移動してしまうかも知れないな~と漠然と思いながら、徐々に小さくなっていった【タンチョウ】を目で追っていました。


 その2日後、事務所で仕事をしていると鳥獣保護区の野管理員さんから電話がありました。『タンチョウがいつもの塒にいた。』という報告でした。『心配してるんじゃないかと思って電話した。』という何とも有り難い気遣いでした。その時の報告は、これまであれほど活発に動き回っていた【タンチョウ】とはまるで別人(?)のようで、塒でじっと耐えるようにして過ごしていたそうです。餌の確保が難しくなったから出来るだけ省エネで過ごして、じっと機をうかがっているのかも知れません。

 秋田の週末はこの時期としては気温の高い日が続き、今日は朝から雨が降っています。これで氷も雪もゆるんでいると思いますが、この後【タンチョウ】がどの様な行動をするのか?気になります・・・。