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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

タンチョウの飛翔

2009年01月09日
秋田
 大潟とその周辺にいる【タンチョウ】は2009年になっても元気に過ごしています!!年々積雪量が減り続けているような感じがしますが、今年も雪が少なく、今日現在、秋田市などの平野部には積もった雪を見ることが出来ません。大潟も同様で田んぼも秋からほとんど変わらない景色が広がっていますから餌を採るのにも有利に働いているようです。

 現在の主な餌は田んぼにいるタニシのようです。私自身「タニシは水路にいるもの」と思っていましたが、大潟では田んぼの中にも驚くほどの密度で生息しています。この密度が【タンチョウ】の旺盛な食欲を支えているといえるかも知れません!この他には落ち穂も重要な食糧のようです。

 現在【タンチョウ】と採餌地が被るのは、アオサギ、ダイサギ等のサギ類。オオハクチョウ、コハクチョウ、ヒシクイ、マガン等のガン類。ミヤマガラス、ハシボソガラス等のカラス類。それにスズメ等の小鳥が加わるものと思われます。
 サギ類と餌場で一緒になった時の模様は以前この日記でお伝えしたこともあるとおり、2~3羽ほどであれば、【タンチョウ】は特に気にしないで採餌を続けますが、5~6羽とちょっと増えてくると【タンチョウ】はサギ達が採餌している場所へ飛んでいって遠くに逃げ去るまで執拗に追い払います。
 また、鳥獣保護区管理員さんから聞いた話ではオオハクチョウとコハクチョウとアメリカコハクチョウがいた群れが【タンチョウ】のそばで採餌していると【タンチョウ】はその群れの中央に割って入って行ったそうです。その時に半分は逃げ去ったのですが、残りの半分が採餌を続けていると【タンチョウ】はその残りの半分を威嚇するように動き回り、ついには全てを追い払ったということです。
 また先日巡視した際にはハシボソガラスとミヤマガラスの40羽ほどの混群が【タンチョウ】のそばで採餌していました。縄張り意識の強い【タンチョウ】はこのカラス達も追い払うよう、羽を広げて追い回すのですがカラス達はそれほど遠くまで逃げることはありませんでした。いくら追い回しても遠くまでは逃げないし、せっかく追い払っても群れの一部が元の場所へ舞い戻ってくる始末・・・。何度か同じ場所を行ったり来たりして追い払おうとするのですが、カラスの群れに軽くあしらわれているようにさえ見えました。すると【タンチョウ】は動きを止め、羽繕いを始めてしまいました。「あっ諦めた・・・」と面白く見ていると【タンチョウ】がぬ~っと首を前方へ投げ出すような動きを見せました↓。


 「あっ飛ぶ!」と思いシャッターを押し続けました。


 翼を広げ、頭を更に低くしてダイナミックな助走へと移行していきます。その歩幅の大きなこと・・


 5歩目で踏み切り、低空飛行へ!【タンチョウ】の助走は初めの1、2歩が小さく3歩目から徐々に大きなストライドへと移行していくという陸上競技のトップスプリンターと同様の運動をみせてくれました。そのスムーズな動き目を奪われたのはいうまでもありません。

 その後、低空飛行のまま500mほど移動して、採餌地を変えていました。採餌地を勝ち取ったのは”カラス軍団”!!思えば【タンチョウ】が採餌地争いに敗れた場面を観察したのは初めてでした。この時の飛翔は「逃避行」ということになるかも知れませんがおかげで面白い観察が出来ました。