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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

迷い込んだ鳥

2008年08月26日
秋田
 空を見上げると秋の気配が色濃くなってきました。野鳥たちの秋の渡りも最盛期を迎えているようです。野鳥たちもそんな空の様子を観て移動しているのでしょうか?


 先日、午前中の観察を終えて大潟草原鳥獣保護区の管理棟でノートや写真の整理をしていると、窓の直ぐ近くで【ヒヨドリ】が賑やかに鳴いていました。【ヒヨドリ】は普段から管理棟の近くで姿が観察されたり、鳴き声が聞こえたりと観察頻度の高い種なのでそれほど気にしないで整理を続けていたのですが、益々賑やかになってきて喧しいくらいまでボリュームが上がってきました。



 返事をするはずのない【ヒヨドリ】に向かって『おいおい、どうした?』と話しかけながら見ると、どうも管理棟に向かって鳴いているようでした。『んっ?』と不思議に思っていると、窓の外の【ヒヨドリ】が鳴いていないのに直ぐ近くでうるさいくらいの鳴き声が聞こえます。
 その鳴き声はなんと室内からでした。声のする2階に上がると明るい灰色をした鳥が天井付近をバタバタと飛び回っていました。





 随分と親鳥と印象が違う【ヒヨドリ】の幼鳥が窓から室内に迷い込んで出られずにいました。喧しいくらいの鳴き声は・・・
幼鳥:「ねぇどうしたらいいの?」
   「どっちに行けばいいの?」
   「早くここから出してよ!!」
   「怖いよ!助けて!!」
親鳥:「大丈夫!落ち着きなさい!!」
   「こっちに飛んでくれば出られるから!」
と、いうようなやりとりだったみたいです。幼鳥はちょっとしたパニックに陥っているようでした。それなのに私が2階に上がってきたものだから益々パニックに・・・
 このままでは暴れて怪我をしたり体力を消耗するだけだと思い、身体を屈めて2階の窓という窓、全て開けて物陰に隠れて見守りました。すると飛び回るのを止めて、鳴いて親鳥に助けを求めていました。

 管理棟の2階は片屋根になっていて東側は天井が高く、西側が低い作りになっています。幼鳥は高い側からどうにか脱出しようと試みるのですが、親鳥は天井の低い側で鳴き声を上げています。その後も何度か鳴き声のやりとりをした後、意を決したように低い側の窓に向かって飛んで行き、脱出に成功しました。
 脱出した【ヒヨドリ】親子は・・・
幼鳥:「怖かったよ~」
親鳥:「もう大丈夫!でももう2度とこんなことにならないようにね!」
と、いう会話をしているかのように鳴きながら2羽で飛び去っていきました。

 
 窓に激突して命を落とす野鳥たちもいるようなので、私も「うわっどうしよう・・」と慌てましたが、【ヒヨドリ】の”親子の絆”の強さで無事脱出してくれて本当に安心しました。