東北地域のアイコン

東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

蝶を食していたモウセンゴケ

2008年07月16日
秋田
 今日の秋田は朝から気温が上がっています。風も止まっているので駅前でバスを待っている間にも汗がにじんできます・・。

 数日前に森吉の巡視を2日続けて行いました。初めは渓谷コースを、後からは外輪山の稜線歩きをしてきました。全く特徴の異なるコースを歩いてきたのですが、2日間ともに【モウセンゴケ】を観察できました。森吉エリアでは渓谷沿いにも山頂付近の湿原にも【モウセンゴケ】見る事が出来ます。
 
 ↓写真は2日目に小池ケ原の湿原で出会った光景です。【モウセンゴケ】に蝶が捕まってしまっていました。蝶はまだ捕まったばかりのようで必死にもがいていましたが、もがけばもがくほど自らの羽は破れ、粘着液に触れる箇所が増えていきました。
 時間の関係で長くは観察できなかったのですが、最初に発見したときと最後に見たときでは何となくではありましたが【モウセンゴケ】が蝶をしっかりと捕らえるために動いていたように感じました。



 ご存じの方も多いと思いますが、【モウセンゴケ】は食虫植物です。因みにコケの名前が付いていますがちゃんとキレイな花も咲く被子植物です。
 いつ来るとも解らない虫を待ち続けて葉を伸ばし、その葉には粘液が備わっていてこれに虫がくっつくと毛のように伸びている粘毛と葉自体がそれを包み込むように変形していき、やがてその虫を包み込み消化・吸収していくのですが、私が見たのはその最初の段階です。

 ↓の写真はその粘毛と葉を20倍の顕微鏡で見た映像です。毛の先端についた水滴にみえる物がじつはネバネバしているのです。



 【モウセンゴケ】の名前のうちコケは実は正しくないとは既述しましたが、モウセンとは何か?というと、漢字では「毛氈」と書きます。余計難しくなった気もしますが、ちょっと思い浮かべてみてください・・・日本庭園に茶席が設けられている場面を・・・。その茶席には赤いじゅうたんかフェルトのような布が掛けられていますよね?それを緋毛氈(ひもうせん)といいます。【モウセンゴケ】が密生している光景を見て昔の人はそれを連想したのだそうです。私が歩いた場所には残念ながらそれを彷彿させるほどの密生地はありませんでしたが・・。



 1番濃くあったところでもこんな感じでした↑。イワイチョウの方がかなり優勢ですね?でも想像をたくましくすれば・・・見えなくもないような・・・苦笑
 しかし緋毛氈が敷き詰められたように【モウセンゴケ】があったらどうなるんだ?と虫たちへの同情を感じますが、実際【モウセンゴケ】は虫を食べなくても根から養分・水分を吸収して生きていけるんです。
 そうやって色々考えていくと私は結構貴重な場面を観察したのかも知れないなぁという気になってきました。