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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

鯉 のぼる

2008年05月02日
秋田
 テレビや新聞などで連日、鳥インフルエンザについて報道されています。今日の新聞各紙には東北地方環境事務所統括自然保護企画官の「十和田湖畔では特段の異常は認められず、心配はない。安心して遊びに来て欲しい」とのコメントが載っていました。
 それに関連して渡り鳥の主要な飛来地・中継地である大潟でも巡視・確認をしていますが今日午前の段階までに異常は見られません。ご安心下さい。

 さて話は変わって昨日の巡視中の話なのですが・・カモなどの渡り鳥が見られていた西部承水路沿いを歩いていると水路からバシャバシャと水を叩く音が聞こえてきます。どうもカモが驚いて飛び立つときに発する水面を叩く音とは感じが違います。なんだろう?と思ってその方向を見ると何か大きな物体が右往左往しているのが見えました。更に双眼鏡で見てみると・・・



 その魚の正体はタイトルにもありますから、もうお分かりのように鯉・【マゴイ】です。承水路の浅瀬に大きな魚がうごめいていました。しかも何匹もいるようです。それにしてもデカイ!!このように浅瀬で鯉がバシャバシャと大きな音を立てている光景は数カ所で見られました。『承水路には随分大きな鯉がいっぱいなんだな・・』『こんな近くに何匹もいるなら網でも取れるんじゃないか?』なんて事も思いながら巡視を続けていました。

 一通り巡視を終えて事務所に帰ろうと車を走らせていると水路沿いに2人のおじさんがいて私の車に向かって手を振っています。どうかしたのかと思って車を止めると、おじさんは『鯉もっていがねが?』と言うではありませんか・・『鯉ですか?』と聞くと2人のおじさんが重そうに網を持ち上げて『ほれっ』と2匹の鯉を見せてくれたのです。『この網で捕まえてきたんですか?』と聞くと『んだ!しかも1回で2匹捕まえだんだや』と言います。『えっ1回で?』と聞き返すと『んだよ!』と得意満面!!『凄いですね!!』と言うと『なぁに、簡単だ!この時期は鯉の産卵の時期だがら2匹並んで浅瀬にのぼって来るんだぁ』と教えてくれました。そう聞くと急にテンションが下がりました・・。



 この個体は60cmを越えています。でも2匹のうちの小さい方。大きな個体はもう少しで1mという大物でした。

 鯉にしてみれば産卵のために連れだって浅瀬にやってきたら、おじさん2人組に網で捕まえられたのですから、なんとも気の毒に思えてなりません。そんな鯉を食べる気にはなれませんでした・・・。そのおじさん達と分かれた後も数カ所で鯉が浅瀬でバシャバシャやっている光景を見ました。

 街で鯉のぼりが風にそよぐ時期は本物の鯉も産卵のために浅瀬にのぼってくる時期のようです。鳥だけでなく生物界全体が次の命のために大きく動く時期なんですね。