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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

サルオガセ

2008年03月21日
秋田
 何故なのか自分でも不思議なのですが、この時期にブナ林を散策しているとヤケに目に入ってくる物があります。それはかすかな淡い緑色をしていて風に吹かれています。里では春の気配が感じられるようになってきたから森吉山麓などの山岳部でも、春が待ち遠しくなって山の中で色彩を放つ物を無意識のうちに探してしまっているからでしょうかね?

 その淡い緑色の色彩を放っていた物は【サルオガセ属】に分類される地衣類でした。日本では現在約40種類(42種類のようですが・・)知られているようです。私が見たのはブナの幹に付着して短く垂れ下がっていたものでした。

解りにくいかも知れませんが、ブナの幹にまるで髭でも生えているかのように見えているのが地衣類【サルオガセ属】の仲間です。

 よく見られる種類は【ヨコワサルオガセ】【ホンドサルオガセ】などがあるそうですが、判別するには枝分かれの様子等細部までの観察が必要です。この日見つけたものは目線よりも遙か上にあってそれが出来ず同定は出来ませんでした。(きっと【○○○】だと思うんだけど・・と言う候補はあるのですが・・)

 地衣類は菌類と違って、木を養分にして木を腐らせることはなく、この仲間も見た目は寄生植物のようですが、実際は空気中の水分を直接吸収して、光合成を行っています。つまり自活しているのです。【サルオガセ属】は『霧藻』と呼ばれることもあるようですが、そこから連想できるように霞を食べて生きているのです。
 ブナに髭が生えているかのような見た目と霞を食べて生きているという生態からまさに仙人のような生き物と言えるのではないでしょうか?