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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

雪山の危険因子 『雪庇』

2008年01月24日
秋田
 積雪期の登山は無積雪期に比べて地面の凹凸が少なくなり登りやすい。と言う声をよく耳にします。実際に私も積雪期の方が短時間で山頂に立てたこともあります。雪が階段の段差を埋め、溝状に掘られた登山道を埋め、ゴロゴロしたガレを埋める。その雪が固く締まっていれば歩きやすく感じるのも納得です。
 しかし雪は段差や溝やガレを埋めて凹凸を少なくするだけでなく、実際には無いはずの場所に実に歩きやすそうな道を造ってしまいます。それが『雪庇』です。読んで字の如く、「雪で出来たひさし」です。屋根のような形をした峰・尾根上の風下に雪庇が出来ます。雪庇の出来方については詳しく触れませんが「峰の断面が三角形であるはずなのに風と雪があたかも断面が台形であるかのように見せかける」と言えば多少理解していただけるでしょうか?
 峰を歩いている時は(峰の上から見ると)台形のように感じますが実際は雪で出来た庇が張り出しているだけですので、誤ってその上を歩くと・・(そんなことは想像もしたくないですね!)

見えにくいかも知れませんが、およその位置に↓を付けてみました。雪庇↓としたのは雪庇の先端位置です。実際の幅は1.5m位だったでしょうか?

幅の広い、なだらかな稜線でも雪庇は出来ます。旗の立っているところが確実に地面のある所です。 

 実際に雪庇を踏み抜いた事による遭難事故の事例も多くあります。雪庇はその時々によって大きさを変え、時には張り出す方向さえ変えますから正確に雪庇の規模などを把握するのは難しいのですが、雪庇が出来る場所というのはそれほど大きく変わることはありません。事前に雪庇の出来やすい場所を把握しておくのは「はじめの一歩!」。その場で安全・適切な判断が出来るように情報収集やトレーニングなども不可欠ではないでしょうか?また相手は自然ですから我々の想像を超えた事が起こってもそれほど不思議ではないでしょう。「まさかこんな場所に・・」「まさかこんなに大きな・・」なんて後から言ってもしょうがないですよね?