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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

宿題の続き

2007年12月25日
秋田
 12月20日の日記で取り上げた伊豆沼のオナガガモですが、正体をはっきりさせるべく『宿題』とさせていただいていました。今日現在も私自身にはハッキリとした正体は判っていません(本当に高いハードルだ・・涙)なので途中経過です・・。

 カモ類にはエクリプスという状態の時期があると書きましたが、そのエクリプスについて入手しやすい図鑑やハンドブックや雑誌等に書かれている記述をまとめて要約すると、『エクリプス(Eclipse)とは日食・月食または光彩を失う。と言う意味でカモ類の雄の羽が雌同様の地味な状態に変わるのに当てはめてその様に呼ばれている。』といった定義になります。更に見ていくと雄の羽が換わる(換羽・かんう)のはカモ類の繁殖行動と密接な関係があることが書かれています。
 カモたちは越冬のために日本に飛来して居ますが、ここで”つがい”を形成してペアとなってシベリアなどの繁殖地に戻っていきます。しかもカモのつがい関係は繁殖シーズン1度きりで解消されます。つまり今カモ達は全員パートナーの決まっていないフリーな状態です。冬が終わり北の地域へ戻って繁殖するためには日本にいる間につがいを形成しなければなりません。ですから日本で過ごす時間はカモにとって子孫を残すためのとっても重要な時間なのです。

 およその流れは・・“日本などで越冬→つがい形成のための相手探し→ペアで繁殖地に戻る→産卵後雌が抱卵→雄は子育てを雌に任せて広くて安全な水辺に移動→換羽(エクリプス状態)→越冬のために移動→  ”となります。(時間の幅はそれぞれ違いますが・・)この流れの「雄が子育てを雌任せにして広い水辺に移動」する時期、外敵に襲われにくいように地味な羽に換わります。この時期の特殊な羽をエクリプスと呼んでいるそうです。
 換羽は飛翔に影響の無い箇所から徐々に始まって後半には風切羽(翼にある大きな羽)まで抜け落ちるので一時的に飛べなくなります。だから地味に目立たなく換わるのでしょうね?そして冬が近づくと、つまりはつがい形成の時期が近づくとそれぞれの特徴的な羽に換わっていきます。日本に飛来した当初はまだ地味な羽が残っていますがそろそろ『恋の季節』が到来するので、今は雌に見初められるように綺麗な羽に換わっています。
 つまり地味なエクリプスは身を守るための保身用で、種別の特徴的な羽はつがい形成→繁殖のためのアピール用だと言えます。
 
 ではこの記事の主役のオナガガモの羽を見てみましょう。雌には無い特徴が出ているので雄だと言う前提で話をすると・・彼はこの状態でアピールをしているのでしょうか?「なかには俺のような他とはちょっと違った格好をした奴が好きなカモもいるんじゃないか?」なんて期待でもしているのでしょうか?

私に魅せてくれるように羽を広げたところを有り難く撮影しました。

またカモを見る場合はくちばしも注目点だと教えていただいたのでくちばしのよく分かる写真も載せます。

【オナガガモ♂】

【オナガガモ♀】

【この記事の主役のオナガガモ】雄のくちばしとは違う?どちらかというと雌のくちばしと似ているような・・・

 20日の記事を見ていくつか反応をいただきましたので紹介します。
①雄と雌の特徴が混じっているから・・・中性?
②雄!こいつはノンキで他よりもエクリプスが長く続いているんじゃないの?
③ほとんどオナガの特徴を持った交雑種じゃないか?
等々色々ご意見をいただきました。答えの見つからない私にとって有り難いことでしたが決定打となるような意見とはなっていません・・・。う~~ん・・

 長々と書いたわりには答えが出ないどころか、迷い所や課題が逆に増えているような・・・さて私に答えは見つられるのでしょうか? 

「つづく」