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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

月山の植生を大切に 柴灯森周辺にロープと掲示を設置しました

2025年09月19日
羽黒 守屋明子
9月16日(火)に月山の姥ヶ岳~山頂間にある柴灯森(さいとうもり)周辺において、植生保護のためのロープ張り及び掲示を行いました。
 
この区間は数十年前に登山道が付け替えられた場所で、今は利用されていない登山道は、現在植生回復が進行している段階です。しかし古い道に誤って踏み込んでしまうケースが多く見受けられるため、多くの人が訪れる紅葉シーズンを前に、立ち入り制限のためのロープと植生回復中のエリアだということを明確に表す掲示物をあらためて設置しました。
ロープ
柴灯森周辺 姥ヶ岳側のエリア
ロープ
植生回復中であることを明確に
ロープ
柴灯森周辺 頂上側のエリア(姥沢方面から)
ロープ
柴灯森周辺 頂上側のエリア(頂上方面から)
私たち羽黒自然保護官事務所は、国を代表する傑出した風景地として選ばれている国立公園に、必要以上の人工物や雰囲気を壊す禁止表示を設置したくないという思いもあります。近年は使われていない古い看板類や必要以上のロープの撤去等を、管理関係者と連携して進めてきました。登山道周辺の景観はだいぶ綺麗になったと思っています。
 
しかし、ロープがなければ登山道の外に出てしまうことがあったり、ロープがあっても「ここになぜロープがあるのか」「そのロープには何の意味があるのか」を読み取るのには知識と経験と想像力を要するのも事実です。紅葉の時期だけ訪れる方や、まだ登山経験の浅い方に対しては、それらの意図が伝わらずに、ほかの登山者とのトラブルのもとになったり、その素晴らしい風景や貴重な自然そのものを知らず知らずに傷つけてしまうことになりかねないと考え、今回の設置に至りました。
 
ちなみにロープを張っていない場所は、登山道の外に出てもいいのでしょうか?答えはNOです。基本的に登山道を外れないでください。なぜなら、月山のような標高の高い場所では、植物の成長や回復が遅く、登山靴やザックで踏まれただけでも不可逆的なダメージを負います。また、植物が生えていない場所でも、登山靴で踏み固められた土は固くなり、植物は根を張れなくなると同時に、雨水が浸透しないようになって、結果として土壌の浸食や崩壊につながり、自然環境の維持に影響を及ぼしてしまうのです。
 
やむを得ず登山道を外れざるを得ない場合は、安全確保が第一ですが、可能な限り石の上に足を置く、植生は踏まないなど、自然にインパクトを与えない歩き方をしていただくように、切にお願いいたします。
 
余談ですが、登山道を外れた、人が歩いていない場所は、足元が不安定なため滑落・転倒の危険が高まります。近年では野生生物の高山帯への侵入も増加傾向にあることから、刈払いのなされていない場所では、マダニ等の害虫がつく可能性もあります。登山道から遠く離れれば、道迷いの危険性も高まります。
 
 
紅葉が終われば、月山は冬化粧をして、強烈な風と深い雪の世界に入ります。ロープを張る杭は曲がり、掲示物は瞬時に飛ばされる可能性があるので、人工物はなるべく撤去して、厳しい冬に備えます。
 
登山道
登山道は厳しい自然から人を守るものでもある
登山道
登山道は貴重な自然を人から守るものでもある