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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

月山八合目外来植物除去・木道維持作業に参加

2025年07月16日
羽黒 守屋明子
6月25日(水)、月山ビジターセンター主催「月山八合目外来植物除去&木道維持作業」に参加しました。
 
月山八合目は、月山の主要な登山口であるとともに、月山噴火の溶岩流が作り上げた希少な山上の湿原・弥陀ヶ原が広がる景勝地。八合目までの車道、駐車場やレストハウス、湿原内の木道など、気軽に高山植物や山上の風景が楽しめる環境が整えられています。その一方で、登山者や観光客などの多種多様な方が訪れることや、利用者や車両の出入りの数自体が多いことから、「本来ここにはない植物が生えている」という状況が生じています。そして、「昔設置された木道の老朽化が進み、修繕が追い付かない」等の問題が顕在化しています。今回、月山ビジターセンターのイベントという形で、そういった問題を多くの方に知っていただくため、羽黒自然保護官事務所も企画調整に協力をしています。
 
イベントには約20名が参加されました。加えて羽黒地区パークボランティア、月山ビジターセンタースタッフ他の総勢約30名で、外来種除去チーム・木道維持作業チームの二手に分かれ、それぞれ1時間ほどの作業に取り組みました。
 
外来種除去チームは、駐車場周辺に生えている外来植物のセイヨウタンポポとフランスギクの除去に挑戦。どちらも花をつけて一見わかりやすそうに見えたのですが、膝の高さまで延びた他の植物に紛れているものを1株ずつ見ていかねばならないため、集中力を要しました。参加の皆さんも水分補給を忘れてしまいそうになる程、作業に没頭。時折、羽黒地区パークボランティアからの「ハクサンチドリがありますよ!」という、高山植物を紹介する声を聴くと、しばし手を止めて、皆笑顔で花に注目。「間違って高山植物を傷つけないようにしなくては」と、さらに丁寧に除去が進んでいきました。
月山
駐車場周辺の外来植物を除去。右奥には鳥海山を望む絶景も、眼と手は外来植物に集中!
月山
皆さんの手で駆除したセイヨウタンポポとフランスギク。厳重に梱包して処理されました
月山
セイヨウタンポポに囲まれていたハクサンチドリ
月山
皆さんの心をときめかせたハクサンフウロ
終了した時には、結果は一目瞭然でした。
月山
作業前 白いフランスギク が侵入していたエリア
月山
作業後 フランスギクは見られなくなりました
そして木道維持作業チーム。月山八合目駐車場から弥陀ヶ原を周遊する木道は、設置から数十年経っています。木道は濡れると滑りやすくなるため、傾斜がついている箇所には足がかりとして横木が設置されていますが、その横木自体につまづいてしまう事例があるそうです。そのため、今回は木道の一部において、耐久性があり段差を押さえた、薄手の金属製滑り止めプレートへの交換を行いました。
月山
駐車場から弥陀ヶ原の木道は緩やかな傾斜があり、下りの木道(左側)には横木を設置(2024年撮影)
月山
木道1枚を1人ずつ担当いただきました。これだけ人数がいると、長い距離もはかどります
月山
設置後(左側)。シルバーの部分がプレート
作業終了後は弥陀ヶ原の自然観察会に移りました。少し曇って涼しくなった広い湿原を半周。最後にプレートを設置した箇所を下って、歩き心地を確かめました。
 
シーズン開始直前の静かな湿原は、高山植物の開花がちょうど始まったところ。まるで皆さんをねぎらうかのように、やさしく風に揺れていました。
月山
咲き始めのニッコウキスゲがお出迎え
国立公園内での外来種駆除や、木道の維持管理を行うためには、環境省や施設管理者の許可が必要となるケースもあるため、イベント参加の皆さんにとっては貴重な体験の機会になったのではないかと思います。
 
私自身も、自分の手で除去やプレート設置に関わったことにより、人間活動が自然に与える影響や、木道といった自然の中に設置されている物がどれだけ過酷な環境にあるのか、そしてそれを維持管理していくには多大な労力が必要となることなど、実際の体験として感じることができました。日ごろからそういった活動に尽力されている方々には改めて感謝を申し上げます。