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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

命の輝き・スプリングエフェメラル・春の儚きものたち

2022年04月21日
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ

今日は4月中旬というのに、自宅の温度計は0度でした。十和田湖の湖水は凍り付いています。

水辺のヤナギのやわらかな新緑を眺めると、

「やはらかに 柳あをめる 北上の 岸辺目に 見ゆ 泣けと如くに」

とたんにこの詩が脳裏に浮かびました。26歳にして亡くなった天才詩人と言われた石川啄木の短歌です。

ドロヤナギがあっという間にはじけていました。ふわふわの綿毛が輝いています。

心はいつでもすぐに故郷に飛べるのだとしみじみ思う朝です。

冬期通行止めの道路の開通のニュースを耳にする季節になりました。

八甲田の雪の回廊を、業務の帰りに通る機会がありました。

今年は例年より雪が多めのようです。

十和田湖もすっかり雪が消えました。

暖かい風の無い日は、穏やかな風景が広がっています。

スプリングエフェメラル。春のはかない命。

雪解けとともに花を咲かせ、他の植物の葉が繁る頃には実を結び命を次世代につなぐ花々達。

カタクリやエンゴサク、ニリンソウやキクザキイチゲ、春一番はそんな命の輝きにあふれています。

※カタクリは湖畔では4月下旬頃にごくわずか見られます。写真は昨年のものです。

また、今の時期、湖畔を彩るレモン色の可憐な花、アラゲヒョウタンボク、舌を噛みそうな名前です。

可憐な花ですが、岩の上に根付くことができる力強い植物です。

あたたかい日差しにつられ、ふわふわの上着を脱ぎ始めたキタコブシを見ていると、「北風と太陽」の童話を思い出しました。分厚いコートを脱がすのは、北風ではなく、さんさんと輝く太陽ですね。

湖畔を歩くと、ほんのり赤い色が空に映えて輝いています。

カツラが満開です。

十和田湖に来たら、ここ「ぷらっと」にぜひお立ち寄りください。

乙女の像や高村光太郎、大町桂月の展示が充実しています。

       雄花                             雌花

高級爪楊枝やお茶に使われることでおなじみの、クロモジの開花ももうすぐです。

枝や幹が烏樟(うしょう)という漢方にもなりますが、薬効が一番高いのは、開花前の今の時期と葉が落ちてしまった晩秋だそうです。

人間は、あらゆるものの命を頂いて生かされています。

命を育む大自然に、感謝の気持ちを忘れず、日々を過ごしたいものです。