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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

新巻鮭作りから考えること

2012年12月06日
宮古
 12月1日(土)『宮古づくし 目指せ!新巻マスター』が実施されました。市の魚に指定されている鮭について、知ってもらうということと、昔から鮭と関わり合ってきた三陸沿岸に伝わる風習に触れる機会を作ろうと企画した浄土ヶ浜ビジターセンターのイベントです。
参加者は、ほとんどが地元の方で、小さなお子さんから大人まで総勢20名でした。


≪紙芝居≫

 まずは、ビジターセンターのスタッフ手作りの『旅する鮭』の紙芝居を鑑賞して、鮭の一生について学びました。
鮭は生まれてから3~5年の間で、生まれた川から海へ移動し、日本の海から今度は海流にのって、世界(北洋)を旅します。その間、様々な経験をします。途中で、クマやアザラシなどの動物の餌となったり、様々な厳しい環境で力尽きてしまうなど、多くの鮭が命を落とす中、産卵のために沢山の試練を乗り越えた鮭が生まれた川へもどってきます。 戻ってくるのは(回帰率)、わずか数パーセント。1%にも満たない数値が報告される年もあります。戻った鮭は、最後の力を振り絞り、産卵をして一生を終えます。
今頃の時期になると食卓に並ぶ鮭、いつも何気なく食べていますが、貴重な命の恩恵を受けていることに気付きます。







 また、鮭は数ある川の中で迷わず自分の古里へ戻ってくるのは、「川の匂いを覚えているから」という説があります。川の周辺の植物や森林が長い年月をかけ腐植土化され川に流れ、それを母川の匂いとして覚えているのです。ですから森の自然が変わると戻ってこられなくなるかもしれません。森と川と海はつながり鮭が生きています。そして、里に住む人間は、その恩恵を受けています。


≪新巻鮭づくり≫

 紙芝居のあとは、水産科学館へ移動し、地域伝統の加工食品である新巻鮭づくりです。
水産科学館の伊藤館長から、鮭について説明をいただいたあとは外へ移動し、今朝水揚げされた新鮮な鮭から自分の運命の鮭を選ぶ所から始まります。新巻鮭にすると、小さく縮んでしまうため、なるべく大きな体がよいです。鮭を選ぶ皆さんの顔は、真剣です。比べて見定めてやっと決めたようです。





 写真上:大きな体の鮭を選んでいます。
 
 写真下:選んだら、自分の右側に鮭のお腹がくるように、置きます。






 写真上:鮭の、エラ、内臓を取り除きます。しっかりととらないと生臭くなってしまいます。
 
 写真下:鮭を洗いきれいにします。たわしでゴシゴシしすぎると、ぬめりがでてしまうので、優しく!







 写真上:洗った鮭に、塩をつけます。体、お腹・・・特に、エラ、目、頭の中にはしっかりとつけます。
     このとき、愛情も込めると、より一層おいしくなるのだそうです。

 写真下:慣れた方は素手です。

 伊藤館長がおっしゃっていました。「自分で作った新巻鮭が一番美味しいんだ!」と・・・。
仕上がりまでは、約1週間漬けてから水で洗ったり、干したり、まだ手間がかかります。参加された方々にはお家に帰ってじっくりと丹精込めて美味しい新巻鮭を仕上げて欲しいと思います。







 写真上:みんなで、鮭を高々と上げ完成を喜びました!

 写真下:発泡スチロールに入れて持ち帰ります。ここからは、家での作業となります。


 岩手県の沿岸は、本州一の鮭の漁獲高を誇ります。
三陸では秋になると、鮭が少しずつ上がってきて、食卓に並び始めます。11月11日は鮭の日とされ、給食では鮭の料理が出るなど、小さな頃から鮭に親しんできました。近年では鮭の中骨を使ったお菓子や缶詰なども販売されています。食べるだけでなく、商店や市場、家の軒先では新巻鮭がつるされているのが、秋から冬にかけての風物詩といえます。 
是非、三陸を訪れ、美味しい鮭料理を食べて昔から引き継がれてきた三陸の味を堪能していただきたいです。

 水産科学館さんでは、12月の7日、14日、21日新巻鮭作りのイベントを実施しています。
時間は、いずれも9:30から12:00までで、申し込み期限は各実施日の2日前までです。
→お問い合わせ 岩手県立水産科学館0193-63-5353