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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

霧の中の八幡平にて

2010年08月02日
鹿角
 日本各地で猛暑のニュースが話題になっていますが八幡平は、このところ濃い霧にすっぽりと覆われる日が続いています。8月に入ってもこの天気で夏休み最盛というのに八幡平湿原では滅多に人と行き会うことがありません。そんな中、私は一人で源太別れの木道脇で秋に予定されている湿原植生回復作業の予備調査をやっていました。


霧雨の八幡平湿原木道。湿原では人知れず秋の色に衣替えが進行中。

 突然、霧の中から御夫婦と見られる二人連れが現れ、霧の中で一体何をやっているのか不思議に思われたのでしょう、私に話しかけてくれました。私も深く考えもせず「せっかく来られたのにこんな天気で残念でしたね。何も見えませんしね。」と答えてしまいました。このお二人は何とも言えない微笑みを浮かべこう言ったのです。「私たち、霧の中で静かな湿原の雰囲気を充分楽しんでいますよ」

 調査作業を終えて自然公園財団の頂上事務所に寄って、この話をしたところ
そこで働いている及川さんが「霧の中でも八幡平を楽しんでくれるというのは心に余裕があるお客様もいるってことね」と感心した様子でした。

 花が盛りを過ぎ、遠くの眺望がきかないような日であっても八幡平の自然環境の素晴らしさを感じ取ることのできる訪問者がいるということは覚えておこう。その一方で見通しのきかない時は、ルートを失ったり、転倒など思わぬ事故の可能性も高まることから、いつも以上の慎重な行動と判断力がここ八幡平でも求められると感じた霧の一日でした。