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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

アブラ棒

2009年10月26日
秋田
 台風が接近しています。紅葉の後半に強い風が吹いたらみんな散ってしまうんでしょうね?現地でお会いする方々とも『なんだか寂しいですね~』なんて言葉を交わしている今日この頃です。



 そんな時期ですから、名残を惜しんで紅葉から話題を取り上げました・・・

 先日の観察会でとある参加者さんから『あの淡い黄色の紅葉はキレイですね~』と声を掛けていただきました。私もこの樹の紅葉が(この場合は・・黄葉でしょうかね?)気に入っていたので『ホント!キレイですよね?』と返事をすると・・・『ところであの樹はなんですか?』と聞かれました。

 皆さんはこの樹が何だかお分かりになりますか??

 そう。【コシアブラ】ですね?森吉の紅葉は渓谷沿いには『紅』が多く、森の歩道沿いには『黄』が多いのが特徴ですが、そのどちらに於いても存在感を放つのがこの【コシアブラ】の淡い、独特の黄色です!



 阿仁のマタギはこの【コシアブラ】を【アブラ棒】と呼んで、猟や採取の道具に加工し、大変重宝しているのだとか・・・
 最近では秋田でも食用にすることが多いのですが、年配の方々に聞くと『コシアブラの新芽が食べられるなんて最近知ったよ・・』と言いますがマタギに聞くと『昔から食べてたよ!でもあまりたくさんは食べなかったな・・』との話でした。
 かくいう私も、新芽のてんぷらは大好きです!でも、この紅(黄)葉はもっと好きです!!



 赤水渓谷で見つけた【コシアブラ】を撮影しましたが、随分と遠くにあるのにやけに目を引くと思いませんか??
 思えば・・・この樹を最初に覚えたのは、この時期だったように記憶しています。そして翌春にその場所に行って・・・(笑) 


 私の中での【コシアブラ】は・・・
①淡い黄色が目を引く美しい黄葉を魅せる樹。
②新芽が食用になる樹。(食べるのは1番芽だけにしましょう。ちなみに2番芽をとってもまた新芽は出るそうですが、それ以降は枯死の確率が高まるのだとか・・・)
③マタギが※山中で道具をこしらえるときに重用する樹。(山の中を歩き回るマタギは出来るだけ身軽な状態で山にはいるのだとか・・・なので最低限の道具以外は現地で調達する事が多い)
④白い樹肌が美しく、加工もしやすいので『※おたかのぽっぽ』などの民芸品に使われる樹。(※山形県米沢市の代表的な民芸品で鷹などをモチーフにした彫刻)
⑤平安時代あたりまでは濾した樹脂を「金漆」と呼んで刀などの錆止め剤として使っていた。
などなど・・・観察会でもついネタにしてしまう樹です。


 特に『アブラ棒』という呼び名は最近、気に入って使っています。