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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

「新奥の細道」で俳句を詠む

2009年10月15日
鹿角
 「わが歳に重ねしブナの幹に苔」

 乳頭温泉郷を流れる先達川に沿って一本の道が延びています。「先達渓谷出湯のみち」と名付けられたこの遊歩道が福島県白河を起点に東北6県を結ぶ全長4374kmの長距離自然歩道、通称「新奥の細道」の一部であることは、残念ながらあまり知られていません。

 今月「全国・自然歩道を歩こう大会」の一環として私達は休暇村乳頭温泉郷と共催で自然観察ハイキングを行ったのですが、ただ歩くのでは無く自然観察で感じたことを「俳句」にして表現するという新しい試みに挑戦しました。これは事務所のベテランレンジャーのアドバイスによるものでした。

 一般参加者には当日、開会式で初めて「自然観察句会」を行うことを話しました。どんな反響がくるか心配だったのですが、遊歩道終点の乳頭キャンプ場では参加した皆さんが真剣な表情でペンを走らせます。全くの偶然で一般参加者の中に秋田俳句界の第一人者の方がわかり、総評をやってもらえることになりました。全員が黄葉したブナの木の下に車座になって、一人一人の作品を読み上げると、その度に拍手が湧き上がりました。それぞれの作品が自然歩道を歩いてきた新鮮な感動に満ちていたのです。総評の中でも素直な自然描写に大変驚いたとの言葉をいただきました。「自然観察会=より知識をもった人からの一方的伝達」という図式からなかなか脱却出来ない悩みがあったのですが、今回一つの方向性が見えた思いでした。自然に接した一人一人の思いを俳句を通して交流できたことに参加者自身が主役で輝いていたのが印象的でした。
  冒頭の句はブナの老樹を詠った一句です。

「山毛欅の実や 油脂ひろがりて 秋を知る」

「透きとおる カエデの紅に ほほ染めて」

「喧噪の 声が無くなる 俳句会」