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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

違いが見えてくる喜び

2009年08月10日
鹿角
 秋田自保護官事事務所の足利ARが投稿の中で「ていねいに観察すると新しい発見がある」ということを書かれていますが、本当に同感です。

 8月に入り八幡平のパークボランティア連絡会で相次いで研修会が開かれました。最初は「八幡平の湿性植物」です。岩手植物の会の片山千賀志先生を講師に招き、八幡沼湿原周辺の植物を一つ一つ調べていきます。普段の自然観察会では派手な花のムシトリスミレやヒメシャクナゲなどの話はしますが、
地味なイネ科やカヤツリグサ科には知識が無いこともあってほとんど触れてきませんでした。
 そして今回の研修が終わりパークボランティアさん達が異口同音に述べていた感想は「八幡平の湿原の構成が非常に多様で複雑ということに驚いた」ということです。高層湿原の発達の程度が場所により様々であり、微妙な地形と水分の変化で、隣同士で全く異なる植生に替わり、全体が細かなモザイク状のパッチ状態にあることがわかりました。イネ科だけで12種、カヤツリグサ科で44種、イグサ科6種が確認されています。八幡平の魅力の一つは多くの湿原の存在ですが、みんな同じように見えていた湿原が少しずつ違って見えてきたはずです。

 もう一つの八幡平の魅力は火山の存在。岩手大学の土井宣男教授から秋田駒ケ岳で実際の地形や岩石を確認しながら火山生成の歴史を学びました。
「地形をじっと眺める。どうしてその地形が生じたかを目一杯想像して推理していく」という土井教授の言葉に思わず吸い込まれていきます。1万3千年の大爆発、山体崩壊前にあったという富士山型の秀麗な古秋田駒ヶ岳の姿が脳裏に浮かんできます。その後に何回と無く続いた水蒸気爆発や溶岩流を伴う爆発が繰り返され現在の複雑な姿ができあがってきました。
 華やかに咲き誇る高山植物で有名な山ですが、ここで活動するパークボランティアさん達は、その美しい花自体、近年まで引き続き活発な火山活動の作り出した環境が生み出したという話をこれからつけ加えていくことでしょう。


 八幡平ミクリ沼のほとりには背の高いクロヌマハリイの花がちょうど開き始めた。沼の名の由来となったホソバタマミクリは今年残雪が遅くまで残っていたせいか、生育が遅く、水面まで伸びてこない。

 秋田駒ヶ岳の焼森でスコリアの形状を調べる。この分析から焼森を覆っているスコリアはもっと西方の火口から飛散してきたことがわかった。また頂上標識を固定していた岩石の中から形が牛糞状の火山弾も見つかった。