2021年9月
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2021年09月06日海上のトレイルルート
名取 富樫信雄
秋の気配が潮風にも感じられる季節を迎えました。
こんにちは、名取自然保護官事務所の富樫です。
今日は"潮風"が特にお楽しみいただけるルートをご紹介したいと思います。
1,000㎞を超える歩く旅の道、みちのく潮風トレイル(以下、トレイル)は、
既存の道(自然歩道や舗装路等々、航路の部分は定期便)を繋いで設定されています。
ただ、寒風沢島(塩竃市)と宮戸島(東松島市)を結ぶ航路には定期便がありませんでした。
そこでトレイルの開通に賛同した地元の船長さん達が、ハイカーのために専用航路(渡船)で
繋いでいるのが、今回ご紹介する"海上のトレイルルート"です。
このルートには3つの特色があります。
1つ目は船長さん達です。(専用航路では8名の船長さん達にご協力いただいています)
船長さん達はそれぞれが地元で生業を営む傍ら、日々のお仕事を調整し、ハイカーのために運航を維持してくださっています。
地元への愛が笑顔と佇まいから伝わってくる魅力的な方々です。
言葉では語り尽くせないので、今回は3名の船長さんに写真でご登場いただきます。
<豪快な笑顔がすてきなS木船長>
<静かな語りが心地よいG船長>
2つ目は船のサイズです。
地元では"だんべっこ"と呼ばれる船ですが、座った位置から手を伸ばせば、海面に手が届くほどの小型船で、地元の漁師が日常的に使っている船です。
身体と海との距離がとても近く、そして地元の日々の暮らしも身近に感じられる様は、あたかも海(トレイル)を歩いているような感覚を味わえます。
3つ目は島々の風景です。
複雑に入りくんだ地形の島々、その波間に浮かぶ牡蠣棚など、松島湾ならではの景観の中に、地元の生活が溶け込んでいます。そこには、穏やかで豊かな離島の空気が漂っています。
船長さん達は、交通手段として運航するだけではなく、"渡し"を通じて
松島湾での思い出がより感慨深いものになればと考えているように思います。
なぜなら、普通に船を走らせると5分程度で着いてしまう距離のところ、
時間をかけて丁寧に案内してくださるからです。
歩くような速度で舟を流し、時には波に漂い、時には駆け出すような速さで
潮風を感じながら..
船の速度に合わせた船長さん達の語りは、島々の歴史、文化、食、生活、自然への畏怖、
そしてトレイルに対する想いに触れさせてくれます。
島々の"今"の暮らしを伝える語りは、
その両側にある過去と未来とのつながりを彷彿させてくれます。
ぜひ訪れて体験していただきたい海上のトレイルルートです。
専用航路(渡船)のご利用方法についてはこちら↓
https://m-tc.org/news/information/1575/
2021年09月03日登山者カウンター ~ 飯豊
磐梯朝日国立公園 裏磐梯 村上英夫
太陽がすっきりと顔を見せる日が少なくて、雨天曇天が続き、気温も下がってきた9月初旬、雨の合間を見計らい、飯豊連峰の川入口に設置した登山者カウンターの点検作業とデータ回収を行いました。
〈御沢小屋跡付近の登山者カウンタ-〉
80台収容可能な駐車場を備えた広々した野営場を出発し、10分ほど歩いて橋を渡った所に登山口があります。飯豊山は古い山岳信仰の山、修験道の山です。登山口には、ご神木である杉の巨木が並び、その傍らに小さな祠があります。ここが長い急登が続く「長坂」の起点。登り始めるとすぐに、ブナやミズナラなどの巨木の森の中に入っていきます
巨木に出会うといつも心の中で、「君はいつからそこにいるんだい?」と話しかけたくなります。巨木の森の中にいると心が落ち着いて、なぜか温かな気持ちになってきます。
〈トンビマイタケ〉
夏の終わりから秋の初めにかけて姿を現すトンビマイタケに出会いました。「マイタケ」という名はついていますが、大きくなると堅くなって食用には適さないようです。あちらこちらに少しずつ、キノコが姿を見せ始めました。
来週以降、また残暑が戻るようですが、山には確実に秋が近づいているのを感じます。
2021年09月03日名取トレイルセンター 野営場整備作業
三陸復興国立公園 晴山功
石巻自然保護官事務所 晴山です。
みちのく潮風トレイル名取トレイルセンターの野営場予定地の整備作業の手伝いを行ってきました。
日頃、石巻・川のビジターセンター園地の整備作業(草刈り、芝刈り)で身についた知識、経験を活かしてきました。(そんな大げさな事ではないのですが)
今春に植樹イベントが行われ、その空き時間に参加者の皆さんにまだ芽を出したばかりの草たちを抜いて頂きとても綺麗な状態でしたが、やはり数ヶ月もほぼ放置していると、アカザ科、マメ科、イネ科の植物に被圧されて春に張られた芝が弱っている箇所が見受けられました。
名取トレイルセンターの野営場はオープンに向け準備中ですが、コロナ渦で野外活動が人気を博しているなか、「開設はいつ?」など多くの問合せを頂いているようです。
秋風が気持ちよい日でしたが、日差しは残暑を思わせるものでした。
その時の様子(写真など)は名取保護官事務所のアクティブレンジャーにバトンタッチします。
2021年09月02日ご注意を!ハチに、ウルシに、カエンタケ
三陸復興国立公園 宮古 古館 百合子
宮古自然保護官事務所の古館です。
これからの季節トレイルを歩く際に、特に気をつけていただきたい虫や植物があるのでご紹介します。
【ハチ】
秋にかけて活発に動き回ります。攻撃性が強く、髪などの黒いものと匂い(香水など)に反応します。ブーンと音が聞こえたら、距離を保ちその場から離れましょう。目の前に現れても振り払わず、じっと去るのを待ちましょう。
【ウルシ】
ツタウルシは赤っぽい茎の3枚葉。ヤマウルシは赤っぽい茎の放射状に枝葉が広がっているのが特徴です。葉や幹の樹液に触れるとかぶれ、肌が敏感な方は離れていても注意が必要です。秋は綺麗な黄~赤に紅葉するので、"綺麗"と思っても不用意に葉を触らず、ウルシではないか確認しましょう。
【カエンタケ】
土から手の指が出ているように見える猛毒をもつ赤紅色のきのこ。大きいものだと十数㎝にまで成長します。毒性は強く、触るだけでも危険なので、見かけたら慌てず絶対に近づかないようにしましょう。
また、マムシやクマなど、今回ご紹介しなかった生きものも各地にいます。
それぞれの特徴を確認したうえで、楽しく歩きましょう。
2021年09月01日無人島で出会った『いきもの』
三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子
こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。
岩手県釜石市の三貫島へ定期調査へ行ってきました。
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釜石市の東北東9km、箱崎半島の南海上に位置し、標高128m、周囲約4kmの無人島であり、島の周囲は断崖をなしており、また、浜は岩礁となっている。島全体が国立公園特別保護地区に指定(昭和30年5月)され、暖地性のタブノキを主体とした自然林が良好な状況で保全されており、オオミズナギドリ、ヒメクロウミツバメ等の海鳥が繁殖している。なお、三貫島は、「三貫島オオミズナギドリ及びヒメクロウミツバメ繁殖地」として国の天然記念物に指定(昭和10年12月)されている。
国設三貫島鳥獣保護区三貫島特別保護地区指定計画書より
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三貫島への上陸は一般的には禁じられています。
無人島とは聞くけれど、どんな島なのだろう?
そう思われる方も多いことでしょう。
今日の日記は三貫島の「いきもの」にフィーチャーしてお届けします。
特定の鳥の繁殖地として保護されている島ですが
その鳥たちの他にどのようないきものが住んでいるのでしょうか。
*地面を歩く・這う系統*
【左】カタツムリの殻を発見。中身は空っぽでした。左巻きですね、ちょっと珍しい。
【右】大きなアリを発見。ムネアカオオアリでしょうか。このほかにも数種類大小のアリを見つけました。
【左】可愛らしいきれいな青虫を発見。シロチョウ科の幼虫でしょうか。
【右】ふさふさの毛をまとった毛虫を発見。蛾の幼虫でしょうか。
*羽ばたき系統*
【左】枯れ葉のようなガを発見。緑の葉っぱの上では目立ちます。
【右】小さな紫色のチョウがたくさん舞っていました。ルリシジミでしょうか。
【左】おもしろい模様の羽を広げてポーズする虫を発見。ハエの仲間でしょうか。
【右】涼しげに鳴くミンミンゼミ発見。抜け殻は見つけられませんでした。
この他、タブノキを好むアオスジアゲハや
秋らしくトンボも数種類確認できました。
滞在時間4時間で、出会えたいきものはこのくらいなので
普段の山中で見かけるいきものの数と比べたら少ないですよね。
生息する獣類がいないためでしょうか。
本土から9㎞も離れた孤島までどのように虫たちが移動してきたのか、
この地で孵化したのか、など想像するのもおもしろいですね。
島へ向かう途中の海上ではこの辺で生まれ育った
若鳥たちをみかけました。
オオセグロカモメの若鳥。
多くの若鳥は巣立っているこの時期、この子はまだ
お母さんカモメの近くを離れられずにいるようでした。
遠くからでもその存在感に目を惹かれます。
いかがでしたでしょうか。
簡単に行ってみることはできない島ですが
どのような環境がそこにあるのか、少しでもお伝えできればと思っています。
次の上陸は冬です。
夏だよりと記したのがつい先日のことのようです。
あの暑い夏はどこにいってしまったのか、十和田湖畔はすっかり秋の気配です。
〈桂浜のカツラやナナカマドが色づき始めました〉
さてこの一面に咲いている綺麗な花はご存じでしょうか?
〈無数の種はシードバンクと言い何年も土中で発芽を待ちます〉
道ばたや、田畑の周辺で良く目にすることはないでしょうか?
特定外来生物に指定されている、オオハンゴンソウの満開の様子です。
以前、十和田八甲田地区パークボランティア活動でも防除活動をしました。
〈道路沿いにも旺盛な繁殖力で勢力を拡大していきます〉
〈以前私が業務で携わった秋田八幡平スキー場のオオハンゴンソウ防除活動の様子〉
〈今ではオオハンゴンソウは減りヤナギランなどの群生地となっています〉
オオハンゴンソウについてはこちらをご覧ください。
<https://www.env.go.jp/nature/intro/4document/files/r_ohangoso.pdf>
<https://www.city.takizawa.iwate.jp/var/rev0/0097/2433/oohangonsou.pdf>
先日まで、十和田八甲田地区のオオハンゴンソウの生育調査をしていました。
国立公園内にどれだけ生育しているのかの調査は、今後の外来生物対策の基礎情報になるものです。
美しい自然を守っていくための一歩です。
先日の調査の際に行ってきた松見の滝と田代沼や休屋の風景をお伝えします。
〈8/30松見の滝〉
〈紅葉の時期 2018/10/23〉
〈キンコウカの紅葉が始まっています:8/27田代湿原〉
〈思いがけず出会えた風景:田代平湿原〉
〈風にゆらゆら楽しそうに揺れていました〉
〈サワギキョウ:地元の盆踊りの踊り手さんの優雅な手のようです〉
〈アオイトトンボさん雄は風に負けないようにしっかりつかまっています〉
休屋は気持ち良い風が吹き渡っています。
〈ツリバナは葉っぱの下でゆらゆら〉
オオハンゴンソウを探しながら御前ヶ浜を歩いていると、林の中に何か光っています。
〈高価な宝石のようにキラキラ光るのはマイズルソウの実〉
〈ミズヒキの花は可憐です〉
いつも業務帰りに通る奥入瀬は、静かな雰囲気です。
〈風に揺れるノコンギク〉
オオハンゴンソウ調査が終わり夏が終わったという気持ちです。