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ブラックバス駆除マニュアル

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/目次 /伊豆沼・内沼の現状 /駆除の前に /人工産卵床の製作と設置 /観察と駆除 /稚魚の駆除 /定置網による駆除 /池干しによる駆除 /他地域における取組み /おわりに/

伊豆沼・内沼の現状

宮城県にある伊豆沼・内沼(写真1)は、 387haの面積をもつ県内最大の淡水湖沼です。水深は最大でも1.6mと非常に浅く、豊富な水生植物のほか、魚類や貝類、水生昆虫など多くの動植物が生息しています。また、伊豆沼・内沼は水鳥の飛来地として世界的にも貴重で重要な自然とされ、ラムサール条約指定登録地となっています。

写真1 伊豆沼(左)・内沼(右)の航空写真

1996年頃まで、 ゼニタナゴ(写真2)を始め、タナゴ類、ヨシノボリ類やジュズカケハゼといったハゼ科魚類が多く生息していました。また、モツゴやタモロコなどの小型魚類は漁業資源として多く漁獲されていました。

写真2 伊豆沼の在来種.ゼニタナゴ(左) トウヨシノボリ(中央) メダカ(右)

しかし、1996年以降、 大量のオオクチバス(通称ブラックバス)が漁獲されるようになり、これとともに総漁獲量は以前の1/3まで減少しました(図1)。また、生息数では1/100にまで減少しました。

宮城県内水面水産試験場では、 これまで伊豆沼・内沼で調査を行い、オオクチバスが沼の生態系に与える影響を評価してきました。

図1 伊豆沼・内沼におけるの年間漁獲量の推移 (高橋 2002を改変)

調査の結果から、 伊豆沼・内沼で、 オオクチバスが急増した理由は、卵や稚魚を守るバスの習性や、 外敵による捕食の少なさから、毎年大量の稚魚が発生したためと考えられました。オオクチバスの稚魚は、ふ化後浮上するまではミジンコなどを捕食していますが、体長25oに成長するとコイ科魚類などの稚魚を捕食します(図2)。

図2 オオクチバス稚魚の成長にともなう胃内容物の変化 (高橋 2002を改変)

伊豆沼・内沼でオオクチバスの稚魚が発生する時期と同時期に、在来魚の稚魚が発生します。大量に発生したオオクチバスの稚魚に在来魚の稚魚が捕食されたことで、在来魚が減少したと私たちは考えています。

伊豆沼・内沼の豊かな生態系が崩壊し、在来生物が生息できない環境になることを懸念して、オオクチバスの駆除とゼニタナゴをはじめとする在来生物の復元を柱とし、ゼニタナゴ復元プロジェクトを2003年に立ち上げ活動しています。

現在、伊豆沼・内沼ではオオクチバス稚魚による捕食が在来魚に与える影響が大きいことから、繁殖の阻止に重点を置き、駆除を行っています。広大な面積で駆除を行うためには多くの人手が必要となるため、ボランティアを募り、「バス・バスターズ」を結成して伊豆沼・内沼で駆除活動をしています。

バス・バスターズは、 2004年から本格的に活動しています。減少した魚類の一部で回復の兆しがみられています(図3)。

図3 定置網1日における1ヶ統あたりの漁獲量変化(10-11月)(高橋 2002を改変)

生態系の復元には多くの時間と労力が必要です。これからも伊豆沼・内沼では生態系の復元を目指しオオクチバスの駆除を行い、 かつての多様性豊かな自然を取り戻すための努力を続けます。

引用文献:
高橋清孝 (2002) オオクチバスによる魚類群集への影響−伊豆沼・内沼を例に.川と湖沼の侵略者ブラックバス日本魚類学会自然保護委員会編,恒星社厚生閣、p.47-59.
高橋清孝 (2005) オオクチバス Micropterus salmonides 駆除の技術開発と実践,日本水産学会誌 71(3),402-405.

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出典 「ブラックバス駆除マニュアル 〜伊豆沼方式オオクチバス駆除の実際〜」(2006年3月 環境省東北地方環境事務所 (財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)
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