報道発表資料
【お知らせ】「釜石広域ウインドファーム」におけるイヌワシの死亡個体について
2008.11.14 東北地方環境事務所
平成20年9月20日、岩手県釜石市にある「釜石広域ウインドファーム」(株式会社ユーラスエナジー釜石)の風車付近において、国内希少野生動植物種であるイヌワシの死亡個体が発見され、東北地方環境事務所は死因特定のための検査等を北里大学獣医学部(青森県十和田市)に依頼していましたが、今般、以下のとおり解剖検査所見を得ました。
収容現場及び検査所見等から飛翔中に回転する風車ブレードと衝突し、死亡したものと推察されます。
1.発生時の状況
- ・発見日時:
- 平成20年9月20日(土)13時30分頃
- ・発見場所:
- 岩手県釜石市
- ・通報者:
- 株式会社 ユーラスエナジー釜石
2.検査所見の概要
- ・種名:
- イヌワシ
- ・年齢:
- 成鳥
- ・性別:
- メス(DNA検査による。)
(1)X線・CT検査所見
左前腕部の橈骨、尺骨の切断及び胸骨左側中央部骨折が認められた。
その他、頭部、頸部、右翼、両脚には異常は認められなかった。
(2)肉眼的所見
ミイラ化している。左側胸部から肩部にかけて、広い開放創が見られ、胸骨、烏口骨、上腕骨骨頭が露出し、特に胸骨中央部には辺縁から中心に向かい横走する骨折が見られた。
(3)剖検者の考察
イヌワシの右方向より運動性のある物体が、左側の胸部~肩部~前腕部に衝突し、前腕部を切断したと考えられる。
鳥類の前腕部は2本の骨と筋肉や腱が沢山走っていることから、通常の衝突であれば複雑骨折をすることが多いが、検査所見から総合的に判断すると相当なスピードの衝突物が一気に切断し、死に至らしめたと推察された。
3.剖検機関
北里大学獣医学部(青森県十和田市)
4.今後の対応
本件風力発電事業者に対しては、検査結果を示した上で、鳥類の専門家の意見を聞くなどして再発防止のための検討をするよう申し入れることとしている。
<イヌワシについて>
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- 北半球に広く分布。日本では北海道から九州の低山から高山までに周年生息。ただし、生息地は主に関西以北の本州。
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- 営巣地は主に切り立った岸壁の岩棚
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- 生息数は全国で約650羽(平成16年環境省推定)。
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- 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」で国内希少野生動植物種に指定(捕獲及び譲渡規制)。
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- レッドリスト上で絶滅危惧IB類に分類。
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- 東北地方のイヌワシの生息状況は、脊梁山脈を中心に山岳地帯で確認されている。
<イヌワシ保護に係る環境省の取組>
- ・種の保存法の指定
- 平成5年4月 国内希少野生動植物種に指定
- ・保護増殖事業計画の策定
- 平成8年6月
- <http://www.env.go.jp/nature/yasei/hozonho/inuwashi.pdf参照>
- ・猛禽類保護の進め方策定
- 平成8年8月
- <http://www.raptor-c.com/gaiyou04.pdf参照>
<風力発電施設への衝突防止に係る環境省の取組>
- ・「風力発電施設に係る適正整備推進事業」(平成19年度~3カ年(実施中))
- 本事業は、風力発電の推進と野生生物保護などの自然環境保全との両立を図るため、バードストライク防止策としての風車への色彩塗装、ライトアップ等の効果の検証や立地条件とリスクの解析、渡り情報の調査などを実施