白神山地の価値とは

白神山地の価値とは

1.推薦理由(1992年推薦書より)

 白神山地は日本の文化を生み長い年月の間営々と存続してきた母なる木ブナ原生林の大面積にわたる素晴らしい眺望を持っています。
 白神山地のブナ林は純度の高さやすぐれた原始性、動植物相の多様性で世界的に特異な森林であり、氷河期以降に爆発的に増えた新しいブナ林の東アジアにおける代表的なものとして様々な群落型、更新のステージを示しつつ存在している、生態的に進行中のプロセスです。また、固有種、絶滅危惧種の生息地でもあります。

2.登録に際しての評価(1995年国際自然保護連合(IUCN)評価書より)

 白神はかつて北日本を覆っていたブナ林の最後で最良の遺物であり、外部から開発されたことのない原生林の広がりは他地域と異なっています。当該地域は断片的なものではなく、面積に対する周囲の長さの割は低く、形状は長円形で、連続する緩衝地帯に囲まれており、良好な保護地域計画に資するものです。
 白神は残存する原生林地区の一つであり、日本固有のブナの森です。ブナが主な植生である生態系には、竹(ササ)、クマゲラ、ニホンカモシカ、ツキノワグマ等が含まれ、機能的な全体として相互に作用しあっています。地球の冷温帯の生態系、特にユーラシアブナ林生態系形成に関する研究及びこの個別の生物群集のモニタリングに非常に重要です。
 白神山地は、世界遺産の評価基準(クライテリア)のうち生態系に該当し、世界遺産一覧表に記載する価値を有しています。

3.登録に係る保護制度

  • 自然環境保全地域 (自然環境保全法)
  • 自然公園地域 (自然公園法)
  • 特別天然記念物 (文化財保護法)
  • 森林生態系保護地域 (国有林野管理経営規程)

4.顕著な普遍的価値の遡及的陳述とは?

 2007年以降に世界遺産一覧表に記載された世界遺産については、世界遺産委員会において記載決議をする際に顕著な普遍的価値の陳述(Statement of Outstanding Universal Value)が採択されています。
 顕著な普遍的価値は、管理計画の改訂や定期報告の作成など世界遺産の諸手続にとってその基礎となるものであり、その明確な陳述が必要です。そのため、2007年以前に記載された世界遺産については、定期報告の開始に先だって、顕著な普遍的価値の陳述を記載時点の情報に遡って作成することとなりました。
 2011年1月31日に、ユネスコ世界遺産センターに白神山地の世界遺産としての顕著で普遍的な価値の遡及的陳述を提出しました。

5.白神山地の価値とはなにか(顕著で普遍的な価値の遡及的陳述)

a.概要

 白神山地は、日本の本州の北部、日本海側の標高約200mから1,250mの山地帯に位置する東アジアで最大の原生的なブナ林が広がる地域で、約12,000~8,000年前から北日本の丘陵や山地を覆っていた冷温帯ブナ林が残存している。
 現在、ヨーロッパ、東アジア、北米大陸に分布するブナ林は、氷期以前の周北極地域の植生が起源であるとされている。これらの植生が、氷期において周北極地域から分布域を変化させる過程で、東西に広がる山岳地域によって南下を阻まれた結果、現在のブナ林の多くは植生が単純化している。
 一方、白神山地のブナ林は、氷期において南下を阻まれることなく日本南部に避難していたブナを含む周北極地域起源の植生が晩氷期以降に再び分布を拡大した極相林であることから、第三紀周北極植物群の多くの要素を含んでいる。

 白神山地では、日本海側の内陸部に特徴的な世界的にも稀な多雪環境を反映して、日本固有のブナを単一の優占樹木とした森林を形成し、常緑性のチシマザサに代表される林床植物を含む多様な植物を伴った特有の植物群落が形成されている。

 また、白神山地には、老齢林を含む多様な森林環境を必要とするクマゲラなどの希少な鳥類、カモシカ、ツキノワグマなどの大型ほ乳類が生息し、これらをはじめとした多くの種が相互作用を持ちながら、生態系の構成要素として機能している。

b.登録基準の証明

クライテリア (ix)(生態系):
 白神山地には、氷期の影響による植生の単純化を分布域の南下によりまぬがれたブナ属が優先する極相林が、原始性の高い状態で分布している。その規模は、北半球の冷温帯の森林において優占するブナ属の分布域の一つである東アジアにおいて最大である。地球規模の気候変動の歴史と多雪環境を反映した森林生態系は、植物群落の発達・遷移の過程を示すものとして、それに依拠する動物群集を合わせて、顕著な見本となっている。
 このため白神山地は、地球の冷温帯の生態系、特にユーラシアのブナ林生態系の形成に関する研究や、気候変動と植生変化の長期的なモニタリングを行う上で非常に重要である。

c.完全性

 遺産地域には、原始性の高いブナ林が分断されることなくまとまって分布している。日本のブナ林の多くは、過去に植林によってスギなどの人工林に置き換えられてきたが、遺産地域は地形が概して急峻なために、人為の影響をほとんど受けていない原生的な環境を保持している。遺産地域は、ブナ林がその生態系の機能を維持する上で必要な要素の全てを包含している。遺産地域の面積は16,971haであり、ブナ林生態系の長期的な存続に十分な大きさを有している。

e.保護管理に係る要件

 遺産地域は、その全域が、国が所有・管理している国有林である。遺産地域は、白神山地自然環境保全地域、津軽国定公園等の自然公園、国指定白神山地鳥獣保護区、白神山地森林生態系保護地域に指定されている。これらの制度はそれぞれ我が国の優れた自然環境等を保護するための仕組みであり、開発等に対して厳格な法的規制を有している。
 また、我が国においてカモシカは特別天然記念物、イヌワシ、クマタカ、クマゲラ等は国内希少野生動植物種や天然記念物に指定され、法的に保護されている。それぞれの制度を所管する環境省、林野庁及び文化庁は、これら複層的に指定された保護区の管理や指定種の保護を円滑に実施するために、白神山地世界遺産地域管理計画を策定し、この計画に基づき遺産地域の一体的な管理を行っている。
 また、関係省庁の現地管理機関及び関係地方自治体は、白神山地世界自然遺産地域連絡会議を設置し、地域との連携・協働による保全管理を推進するとともに、学識経験者による白神山地世界遺産地域科学委員会を設置し、科学的な知見を反映した順応的な保全管理を進めている。
 また、IUCNによる保全状況調査(1997年)を踏まえて、地域連絡会議の構成機関が追加され、現在は関係町村が議論に加わっており、情報発信、普及啓発、利用者指導、施設整備等の遺産地域の管理について調整している。

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