ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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十和田八幡平国立公園 十和田

398件の記事があります。

2010年10月07日「日本のいのち、つないでいこう! COP10まで10日前」

十和田八幡平国立公園 十和田 嶋村 道

【命の終わりと始まり】


南八甲田のすそ野に位置する蔦沼はもうじき秋の彩りに包まれます。

園地内には森の中の沼を廻る小径があり、四季を通じて沢山の動植物に出会うことができますが、ふと立ち止まって足下や朽ち木をよく見てみるとじつに多くのキノコが生えていることに驚かされます。
地面に生えるもの、生きた木に生えるもの、朽ちた木に生えるものなど、様々な色と形をしたキノコが季節の変化とともに目まぐるしく入れ替わります。

倒木に生えたキノコは長い年月をかけて木をふわふわの土壌に変え、この土壌はやがて新たな生命を育みます。


アカチシオタケ


ホコリタケ


キノコたちが落ち葉や倒木または昆虫の死骸などを分解することや、自らが昆虫たちの餌となることで蔦の森の物質循環に大きな役割を果たし、多様な生命を支えているのです。



長沼

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2010年08月27日~日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前~

十和田八幡平国立公園 十和田 嶋村 道

【高山に棲む飛べないバッタと旅をする蝶】

日本全国に分布しているフキバッタの仲間は翅が退化していて飛ぶことができません。長距離を移動できないことから地域ごとに種類が分化して、その地域にしか棲んでいない地域固有種が多く生れたと考えられています。

八甲田山に棲んでいるハヤチネフキバッタは気温の低い高山で生活しています。八甲田山の涼しい気候がこのバッタにとっては棲みやすい環境なのです。
では、地球温暖化で気温が上昇してしまったらどうなるのでしょうか?
このバッタには翅が生えていないので、涼しい北海道の山などに飛んで移動することはできません。
つまり、涼しい場所を求めて標高の高い所に移動しなければならず、生育環境は狭まります。気温が2℃上昇した場合、単純に計算すると生息のための条件が約300m上昇します。これによって、北八甲田においては生息域がおよそ3分の1になると予想されます。

ミヤマリンドウとハヤチネフキバッタ
(リンドウ科リンドウ属/バッタ科フキバッタ亜科ハヤチネフキバッタ属)

八甲田の高地にはアサギマダラという旅をする蝶も棲んでいます。この蝶は夏の期間を涼しい高原などで過ごし、秋になると温かい九州地方などに移動すると言われています。この蝶の生態にはまだ謎が多く、八甲田に生息している個体がどの程度移動しているのかも解明されていないようです。

オニアザミとアサギマダラ
(キク科アザミ属/タテハチョウ科マダラチョウ亜科アサギマダラ属)


ハヤチネフキバッタやアサギマダラなど限られた場所でしか生活できない生き物達は、わずかな気候変動や生態系の変化で突然姿を消してしまう可能性があります。
多様な生態系を保全し、ハヤチネフキバッタやアサギマダラがいつまでも八甲田山に生息できるよう、私たちは何をすべきかを一緒に考えてみませんか?


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2010年08月13日台風一過

十和田八幡平国立公園 十和田 種村 由貴

ここ最近十和田湖も30度を超える夏日が続いておりました。
しかし台風4号の影響で、昨日は涼しいを通り越して肌寒い感じ。
さてその威力たるやどんな感じか…と若干の不安を感じていましたら
なんてことはない。ちょっと風が強い雨でした。

今日は一応台風後の影響を見るため、休屋をくるりと巡視してきました。まさに台風一過。実にすがすがしい気持ちの良い天気です。あの夏日の湿度の高いむわっと感も無ければ、風は涼しく、空は高く。
台風が秋を連れてきたようです。

明日はまた雨模様のようですが、確実に季節が移ろいでいると感じる日でした。

※強風の後に森などに入る際は、折れて引っかかっていた枝が落ちてくる危険性があります。充分お気を付け下さい。

御前ヶ浜。
少し風が強かったです。




十和田湖は今カツラの甘い匂いが香ってきます。また、クサギの花が咲き誇り艶やかなカラスアゲハ(ミヤマカラスアゲハ?)がその周りを乱舞しています。アサギマダラも八甲田などの標高の高いところに来ていますよ。

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2010年05月20日幻の滝と井戸岳(北八甲田巡視No.2)

十和田八幡平国立公園 十和田 嶋村 道

5月11日に酸ヶ湯温泉から毛無岱を経由して井戸岳(1520m)までのコースを巡視してきました。
当日の十和田湖の空模様は曇でしたが、標高の高い場所では恐らく霧がかかっているだろうという予測のもと酸ヶ湯温泉にむけて出発しました。その予想通り蔦温泉周辺から急に霧がかかりはじめ、標高をあげるごとに視界はどんどん悪くなっていきます。もっとも視界の悪かった猿倉温泉~傘松峠付近では10m先が何とか見通せる程度で、峠道の運転は困難を極めました。
この視界ではさすがに入山するのを躊躇しましたが、とりあえず酸ヶ湯まで行って様子だけでも見ようと思い、突然現れる急カーブと対向車に注意しながら目的地を目指しました。
すると、傘松峠を越えた瞬間に霧が薄くなり始め、酸ヶ湯温泉に着くころには青空が広がっていました。つまり「やませ」だったわけです。
東からの湿った空気団が八甲田を昇り、標高とともに気温が下がることで霧が発生して水滴になります。その空気団が峠を越えて下降しはじめると今度は温度が上がり、霧が消えます。酸ヶ湯から傘松峠方面を望むと、雲が峠を越えた瞬間に次々と消えていく様子がはっきりと確認できました。
酸ヶ湯温泉裏の急斜面は部分的に登山道が見え始めていましたが、登りきって平坦な部分に出ると登山道はまだ完全に雪に覆われていました。夏道は下毛無岱を通りますが、本日は下毛無岱をショートカットして、上毛無岱に登る急な木の階段の地点を目指して歩きました。
そこで、おそらくこの時期にしか現れないものに出くわしました。
上毛無岱から流れ落ちる幾重にも連なった滝を発見したのです。高低差はゆうに15mはあるかと思われます。湿原からの豊富な雪解け水が勢いよく落下して、雪に開いた穴に吸い込まれていく様子は非常に迫力がありました。夏場は道が無くなるのでこのポイントまで行けません。何よりも水量が少なくなるので滝になっていない可能性もあります。冬も雪に埋もれているか、水が流れていないと思われます。

毛無岱から流れ落ちる滝

上毛無岱から大岳避難小屋までの登山道上は部分的に木道も見え始めており、花が咲き始める季節が待ち遠しいです。

上毛無岱

大岳避難小屋から井戸岳まではほぼ登山道が出ています。井戸岳山頂から田茂萢岳への稜線にもほとんど雪は無く、ロープウェイを利用して田茂萢岳から縦走してきたと見られる登山者の方が数名いらっしゃいました。
本日のような天候の場合には山の西側が晴天に恵まれていましたが、気圧配置が逆になれば状況も正反対になる可能性があります。山の天気は変わりやすいといいますが、局地的にみても非常に変化があることが良く分かりました。
刻々と変わる山の天候に注意しながら十分な装備と行動時間をもって登山を楽しんでいただきたいと思います。
また、この時期には積雪深が浅いため特に湿原部では歩道の踏み外しによる貴重な湿原植生の荒廃を招くおそれがあります。植生の保護に十分注意していただきますようご協力お願いいたします。

井戸岳山頂

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2010年05月12日オオルリ、キビタキご一行

十和田八幡平国立公園 十和田 種村 由貴

こんにちは。十和田自然保護官事務所の種村です。
もう5月になってしまいましたが、今年度初のAR日記投稿です。
今年度もどうぞ宜しくお願いいたします。


さて、5月の十和田湖では冬鳥であるカモ類の渡りも終わり、夏鳥の季節となりました。コムクドリにウグイス、センダイムシクイ、カラ類も賑やかに囀っております。そんな夏鳥の代表がキビタキとオオルリです。2種ともオスは実に鮮やかな姿をしております。

主に林の中にいるこの2種。芽吹いてきた葉に邪魔され、なかなか間近では見られない印象だったのですが、なんと!!事務所近くにオオルリ、キビタキのご一行様がいらっしゃったのです!

昨日今日とキビタキ、オオルリの目撃が相次いだので、もしかしたら団体様が到着されたのかなと推測されます。しかも人目のつくところでしきりと地面を行ったり来たり。動きもそれほど素早くありません。耳ではなく目で発見する感じです。長旅の疲れでまずは腹ごなし、ということなのでしょうか。

また十和田湖ではまだ桜が咲いておりません。ここ数日の低気温で芽吹きも遅れておりまして、先週末くらいにようやく木々が芽吹きだしました。そのお陰か夏鳥の小鳥たちの姿も非常に見つけやすいです。

セキレイのように間近でオオルリと追いかけっこができるとは、なんて贅沢なんでしょうか。それも国立公園の自然性の高さなのかと感じました。

ピントが甘いのはご容赦下さい。

自然保護官撮影。

11日撮影キビタキ。

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2010年05月07日春の乗鞍岳

十和田八幡平国立公園 十和田 嶋村 道

更新が遅くなりましたが、4月27日にスノーシューウォークイベント(十和田ビジターセンター行事)が南八甲田の乗鞍岳(1449m)で開かれ、同行してきました。

右後方に見えるのが乗鞍岳

起点となる猿倉温泉(850m)を8:30に出発し、猿倉岳には登らずに矢櫃橋を経由して乗鞍岳に11:30に登頂してきました。
例年に比べ今年は積雪量が少ないと言われていましたが、4月に下旬になっても寒い日が続いていたため、猿倉温泉周辺の登山道もまだ雪の下に埋もれていました。

矢櫃橋へ行くまでのブナ林にはかなり沢山のクマ棚がありました。クマ棚とは秋にクマがブナの木に登って枝を折ってどんぐりを食べ、折った枝をお尻に敷いていくことによって樹上にできる大きな鳥の巣の様なものです。ブナの幹には登る際のえぐったような細かい爪の跡と、降りる際についた長いひっかき傷が生々しく残っていました。
熊の気配がかなり濃厚な地帯でしたので、入山される方は十分お気をつけ下さい。

クマ棚

雪解けとともに少しずつ見え始めた矢櫃橋を越えると、植生はアオモリトドマツに段々と変わっていきます。標高が1300mを過ぎる頃になれば樹氷も見ることができました。

乗鞍岳山頂

平日にも関わらず多くのスキーヤーも入山していたようで、猿倉岳の東斜面を楽しそうに滑り降りる姿も見受けられました。
山頂からの視界はややかすんでいたものの、北八甲田の山並みや、南の方角には十和田湖の湖面、そしてその遙か遠くには岩手山の姿も確認することができました。

※GW期間中にかなりのスピードで雪解けが進んだと思われます。登山道が部分的に出始めるこれからの時期はルート取りが難しくなります。地図・コンパス等、十分な装備が必要です。

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2010年04月22日北八甲田巡視No.1

十和田八幡平国立公園 十和田 嶋村 道

4月22日に八甲田大岳(1584m)に登って、登山道の状況を確認してきました。八甲田大岳の巡視日記は今回が一回目ですので、コースの様子を分かりやすくお伝えするために、少し詳しく書いてみます。
行程は酸ヶ湯温泉から仙人岱避難小屋を経由しての大岳ピストンです。
ここ数日、悪天と気温の低い日が続いていまして、この日も酸ヶ湯温泉付近は濃霧・みぞれ・強風で視界はわずか30m程でした。

酸ヶ湯温泉登山口(900m)から仙人岱避難小屋(1330m)までの登山道はほぼ雪に覆われているので安全な登山をするためには地図やコンパスは欠かせません。スキーコースの看板や誘導のためのポール、登山者たちの歩いた足跡も参考になりますが、視界の悪いときや雨や雪が降るととても見えにくくなるので注意が必要です。


酸ヶ湯から地獄谷へ向かう途中。このような状況ではコンパスが大活躍。

樹林帯を抜けて地獄谷にさしかかると風はいちだんと強さを増し、下流方向から吹き上げる風に硫黄の臭いも混じるようになります。地獄谷の上部は吹き抜ける風のためか積雪が少なく、一部では登山道が出始めている箇所もありました。

仙人岱の避難小屋入り口は除雪されており、一階の玄関から出入りすることができました。
ここで装備を調え、体が冷えない内に一気に山頂を目指します。
大岳山頂付近も強風で積雪が少ないだろうと見込んで、スノーシューは小屋に置いていくことにしました。

大岳におけるアオモリトドマツの森林限界1400m付近を過ぎると環境は一変します。
登山道はほとんどむき出しになり、細かいあられが容赦なく顔に吹き付けます。まるで一秒間に30回くらいのペースで顔面に強い静電気を浴びせられているような感じです。
風が強過ぎて息をするのも困難です。大きい樹木が生育できない理由を肌で感じました。


標高1400m付近。登山道が見え始めます。

登山道は雨とあられと強風で所々カチカチに凍り付いており、雪のある柔らかい場所を選んで慎重に歩く必要がありました。また、凍っているのは登山道や岩だけでなく、登山道のロープや自分の背負っていたバックパックも見事なまでに氷でコーティングされていました。
山頂直下にある鏡沼付近ではまつげも凍り付いてしまい、まともに前を見ることもできませんでしたが、幸運なことにピンポイントで山頂のみが比較的風が弱く無事登頂することができました。
この時期の登山にはこの時期にしか味わえない魅力がたくさんありますが、天候と装備には十分注意して楽しんでいただきたいと思います。


大岳山頂のロープ。まるでイカの卵のよう。風の強さがうかがえます。

※巡視で得た情報については酸ヶ湯インフォメーションセンター内の掲示板とアクティブレンジャー日記で随時発信していく予定です。

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2010年04月15日初パトロール

十和田八幡平国立公園 十和田 嶋村 道

はじめまして。4月から十和田自然保護官事務所で働くことになりました嶋村道(しまむらたお)です。
青森の人と自然が大好きです!
美しい自然を守り、沢山の方と触れあえるアクティブレンジャーの仕事をとても楽しみにしています。よろしくお願いいたします。

投稿が遅くなりましたが4月8日に初パトロールに行ってまいりました。
十和田湖の北に位置する御鼻部山から善光寺平にかけての約15㎞をテレマークスキーで歩きながら、スノーモービル乗り入れ規制パトロールを行いました。
残念ながら、一週間ほど前に走ったと思われるスノーモービルの跡が見つかりました。山でスノーモービルに出くわした経験のある方はご存じかと思いますが、凄い爆音です。鳥獣に与えるストレスや、踏み固めや接触による植物への物理的な影響は計り知れません。
スノーモービル愛好者の方々は「乗り入れ規制看板」を見ましたらそのエリアには入らないよう節度ある楽しみ方をお願いいたします。


南八甲田の山並み
この時季はサングラス必須です。雪の照り返しが強いのであごの下にも日焼け止めを三度塗りくらいしておきましょう。

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2010年02月18日初カモシカin休屋

十和田八幡平国立公園 十和田 種村 由貴

先週の土曜日、びっくりな出会いがありました。
休屋に来て初のカモシカです!

他の場所では見たことはあったのですが、休屋の中ではまだお目にかかれていませんでした。
しかし驚いたのは、出てきた場所よりもそのタイミング。
十和田湖では現在十和田湖冬物語が開催中で、休日ともなると結構な人が訪れます。
加えてこの日はイベントで熱気球をふくらましており、ごーーっという音や車、人の声、会場の音楽やステージでの催しものなど、冬物語期間中でも特に賑やかな日でした。

そんな時に会場からほど近い、雪の壁を越えれば人の多い駐車場という民家の庭先に出没していたのです。
よほどお腹が空いていたのでしょうか?
車道からもかなり近かったのですが、警戒もそこそこにお食事に没頭しておりました。

片や祭りでにぎわう会場と、片や厳しい冬を生き抜く野生との、ちょうど間の境界線に立っているようなそんな心持ちでしばしの出会いを堪能しておりました。




あまり至近距離でじろじろ見ているのも失礼かなと思いましたので、早々に立ち去らせて頂きましたが、その後続々やってくる車がそこにも路上駐車をしていたようなので何人かのお客様にもそんな出会いがあったのかもしれませんね。



そんな出会いも国立公園の楽しみの一つですね。

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2010年02月10日【開催案内】生物多様性:全国ビジターセンター等連携企画

十和田八幡平国立公園 十和田 種村 由貴

 2/1~5/16までの約3ヶ月間、十和田ビジターセンターではCOP10に向けた全国ビジターセンター等連携企画「地球のいのち、えがいてみよう」を実施しております。

 2010年は「国際生物多様性年」という、世界中で生物多様性について考える年にしようと国際連合で定められた年です。また10月には名古屋で生物多様性の国際会議COP10(生物多様性条約締約国会議)が開催されます。
 これは世界中の人々に日本の自然の素晴らしさ、生きものの豊かさを知ってもらえる絶好の機会!!ということで企画されたのが、この「地球のいのち、えがいてみよう」という訳です。

 一体どんな企画なのかと申しますと、至って単純明解。大きな模造紙に、その地域の原図が描かれており、そこで見られる生きものたちを皆様に折り紙や塗り絵、イラストにして表現してもらうというものです。
 そしてその施設は全国の環境省地方環境事務所・関係機関のビジターセンターなどの施設で連携して行っており、その一つとして十和田・八甲田地域の十和田ビジターセンターも参加しているのです!

 
十和田ビジターセンターでは、十和田八幡平国立公園の十和田湖と八甲田山をイメージした下絵を描いてみました。


 折り紙やイラスト用具、この地域で見られる生きものの「りんかく」をご用意しておりますので、思い思いの方法で生きものたちのにぎわいを表現していただきたいと思います。
 
 お近くに寄られた際には是非十和田の生きものの輪の中に参加してみて下さい。皆様のお越しを心よりお待ちしております!

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