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東北地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

初夏の首崎(こうべざき)へ

2021年06月11日
大船渡 坂本麻由子

こんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

まだ梅雨入り宣言の聞こえない北東北です。皆さんの地域では梅雨入りしましたか?

今年もこの時期、三陸復興国立公園で指定植物になっているマルバダケブキや海浜植物をはじめとする自然環境調査を目的に大船渡市首崎へ行ってきました。この日はあいにく鈍色の空で、気温は高くじめっとする気候でしたが、岬先端では心地よい潮風が湿気を払ってくれました。

鬼の首が流れ着いたことから名付けられたと伝えられている、そんな首崎ですが、大船渡事務所管内では特に自然性が高い地区ということで、この自然環境の保全がミッションとなります。太平洋に突き出た先端部は、雄大な外洋、海食崖、連なる半島などの絶好の展望台となっています。

今年のマルバダケブキの咲き具合はどうでしょうか、楽しみに入口に立ちます。

入口にさっそく咲いているではありませんか。期待が膨らみます。

時期としては今週が見頃でしょうか。一面黄色の絨毯のようでした。

今年のマルバダケブキはニホンジカによる葉の食害が目立ちました。この辺は例年ですとマルバダケブキは食べられる対象ではないのですが、シカ界の食糧難なのか好みの変化なのでしょうか。勢いよく育つと花茎が1メートルほどにもなるこの花ですが、背の高いものが少ないなという印象でした。

さて首埼灯台のある岬先端へと歩みを進めます。先端に向かって馬の背の部分を歩いて行くわけですが、南側斜面はボロボロと激しく崩れています。あと数年で通っている上の歩道も崩れてしまいそうです。

灯台の建つ高台から南側を振り返ってみました。

過去3年の記録写真です。19年に海側の斜面が大きく崩れ落ちているのが見て取れます。この年は15号、19号と大きな被害をもたらした台風がやってきました。その後は大きな変化は見られないようですが、観察・記録を続けていこうと思います。

灯台周辺では海浜植物の観察です。突端という厳しい環境下で必死に生きている植物たちも記録しています。他の海岸でも見られる植物もあるのですが、成長具合は首崎のみんなは他より遅い様子です。半島の基部から約9キロも海に突き出した岬の突端です、風当たりも強く冷涼なのでしょう。それでも頑張る植物たちに元気をもらえた気がします。

半島先端まで到着し、観察・調査も一段落。お昼ご飯を頬ばっているときです。目の前の崖に気になる黒い鳥が見えました。海抜101メートルの場所に私は座っています。感覚が伝わるよう足を写して下に見える島を撮影してみました。

その黒い鳥は、ここからではゴマ粒のようにしか見えません。肉眼では全く歯が立たないのでカメラのズーム最大にして覗いてみることに。

崖になにやらたむろっている黒い鳥がいるようです。さらに寄ってみると・・・それはウミウのコロニーでした。7ペアほどは確認できます。巣に座り込んでいるのは抱卵中でしょうか。そのそばには見守っているパートナーが寄り添っています。ウミウの繁殖の様子は初めて見たのでとても感動しました。三陸の海・岩場ではウミウはよく出会うことができる鳥です。こんな崖っぷちで愛をはぐくんでいたのですね。ひとつ嬉しい発見をしてホクホクで帰路につきました。