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アクティブ・レンジャー日記 [東北地区]

東北地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2021年2月15日

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2021年02月15日冬の野鳥観察会

三陸復興国立公園 大船渡 坂本麻由子

皆さんこんにちは。大船渡自然保護官事務所の坂本です。

暦の上ではとうに立春は過ぎましたがまだまだ寒い日が続きますね。

今日は今の時期だからこその話題です。

国立公園内で寒い冬でもフィールドワークを楽しみましょうということで

小雪舞う中パークボランティア活動として、勉強する目的で野鳥観察会を行いました。

野鳥観察初心者の私たちは観察しやすいカモなどの水鳥を勉強することにしました。

三陸復興国立公園内で選んだ観察場所は、陸前高田市の古川沼(ふるかわぬま)、

そして気仙沼市大島の小田の浜(こだのはま)です。

古川沼は内陸から流れる川が広田湾に注ぐ付近に発達した砂州によって、

湾の一部が閉塞されて形成された潟湖で、海水と淡水の混じる汽水湖です。

2011年の大津波で高田松原と共に広田湾と古川沼を隔てていた砂州の大部分を消失し

海と一体化してしまった古川沼ですが、現在は復興工事が進み

東日本大震災追悼祈念公園の一部として震災前の姿に近い形に整備がされています。

震災前に見られた水鳥たちも安心して過ごせるようになり戻ってきています。

その古川沼で今回見られた鳥たちをご紹介します。

  (左)左2羽はマガモのペア。カルガモが1羽なぜかつきまとってます。

  (右)ホシハジロ3羽そろって背中に顔を埋めてお休み中、背眠(はいみん)と言うそうです。

  (左)ウミアイサのペア。嘴と目が赤く、ボサボサ頭がトレードマークです。

  (右)ホオジロガモの雄。遠くからでもほっぺの白い模様がよく見えます。彼女募集中?

  (左)スズガモの雄(奥)雌(手前)。雄のグレーの嘴、雌の嘴の根元の白い模様が特徴です。

  (右)ヒドリガモのペア。雄のおでこの金髪がかっこいいですね。

なぜスズガモだけ"ペア"と書かなかったか・・・

その理由はこの写真をご覧ください。

右3羽が雄。それを見つめる雌5羽が左側にいます。

この中でペアリングされるとすると雌が余っちゃいますね。

既にペアになっている子たちもいますが、彼らにとって今が恋の季節。

鳥たちの世界の恋模様を想像しながらの観察も面白いですよ。

種類を問わずたくさんカモたちが集まっている場所がありました。

うがいをしていたり羽繕いをするような仕草が見られました。

ここは内陸を通ってきた川が古川沼に注ぐ河口部です。

上流で河川堤防工事が行われているために泥混じりの水が流れてきていますが

彼らにはどうしても必要な淡水なんですね。

海水で活動し、体に付いた塩や体内の塩分を落とすために

定期的に淡水域を求めて来るようです。

さて次は場所を気仙沼大島に移動しまして今度は海の水鳥の観察です。

小田の浜での観察ターゲットは12月の日記でご紹介したコクガンです。

見つめる先には海上で食事中のコクガンたちがおよそ40羽いました。

前回は運良く砂浜に上陸していたコクガンを見ることができたのですが

この日はあいにく海の上でした。

海藻を餌とするコクガンたちも塩分調節のため淡水を必要とするということを知り

そのつもりで観察してみると・・・

砂浜に残っていた足跡です。

海から上がってきて向かった先には内陸から流れてきている沢がありました。

淡水で体を洗い、整えてからまた海へと向かったんでしょうね。

沢の終点にはちょっとした池のようになっている水たまりがあって

その周りにはたくさんの水鳥たちの足跡がありました。

水浴びでごった返すコクガン団子をいつか観察してみたいと思いました。

海藻を咥えているコクガンの姿が見えます。

黒い体のコクガンに混じって、同じく黒いオオバンがいる模様。

潜水の得意なオオバンが潜って海藻を咥え、水面から顔を出すと

すかさずその海藻を横取りするというコクガンの行動がよく見られました。

優雅な姿から勝手にかわいい優しいコクガンを想像していましたが

潜りの不得意なコクガンは意外とずる賢いのかもしれませんね。

小田の浜の淡水の水たまりで見られたオナガガモ(雄)です。

丁寧に自慢の尾羽を念入りに嘴でお手入れしていました。

他のカモたちと比べるとスラッとしていますね。

今回出会った全ての鳥たちをご紹介できたわけではありませんが、

寒さも忘れ、数時間でたくさんの発見がありました。

みなさんも双眼鏡片手に冬の鳥たちを観察してみてくださいね。

最後に、陸前高田市に戻ってきてくれているオオハクチョウの姿を。

震災後、街中復興工事で、餌場となる農地が不確定だったため

なかなか里で見ることができなかったオオハクチョウ。

田畑の実りが復活すると同時に彼らも戻ってきてくれました。

後ろに見えるのは震災遺構の「旧道の駅高田松原タピック45」です。

まだ復興半ばではある陸前高田の街ですがハクチョウたちが復興の光を

射してくれているようで嬉しくなります。

この日この田んぼに来ていたオオハクチョウ約80羽。

たくさん食べて体力付けて行ってね。来年も楽しみに待っています。

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