2017年8月
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2017年08月30日伊豆沼・内沼で最新機器開発
仙台 鎌田 和子
こんにちは、仙台自然保護官事務所の鎌田です。
8月29日、伊豆沼・内沼自然再生協議会及びラムサールトライアングル関係者の現地視察会が開催されましたので、紹介いたします。
内容は「ロボットやネットワークカメラ、ドローンを活用した湿地生態系の監視・管理システムの構築」と題して、研究開発しているロボット等の公開デモンストレーションです。
①ハス刈りロボット(東京大学大学院農学生命科学研究科)
このロボットは、無人でGPSにより指定した場所のハスやヒシなどの水生植物をバリカン状のカッターを装着し水草刈りをして、指定した場所までちゃんと帰ってきます。まるで自走式の掃除機のようです。大きさは軽トラの荷台に積載できるそうです。
②水鳥モニタリングシステムにおけるドローンの活用(酪農学園大学)
マガンがねぐら入り後の残照時に短時間で撮影することができるそうです。上空100mから150mの高さから、高感度カメラで撮影しAI処理によって、マガンの羽数の自動カウントも行うことができ、水鳥の生息数の推移把握、沼の植生やハス刈りなどに活用することができそうです。
③マガン・トンボ・水中の遠隔・自動モニタリングシステム
(北海道大学大学院農学研究院生態環境物理学研究室)
沼に設置することで、マガンの飛び立ち、ねぐら入りの羽数について撮影、自動カウントができ、220度までの角度で撮影可能だそうです。カメラは、トンボ用、水中用と3種を開発中です。丸いドーム型のカメラ(写真)には、ワイパー兼日よけが装備され、汚れをふき取り、いつでもクリアな状態で撮影ができるそうです。
これら3つの研究開発は、環境省の補助で、東京大学大学院農学生命科学研究科、酪農学園大学、北海道大学大学院農学研究院生態環境物理学研究室、宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団と共同で研究開発が進められています。
出席した伊豆沼・内沼自然再生協議会や宮城県北部にある3つのラムサール条約湿地の関係者の方々は興味津々に視察しました。全国には、同じような悩みを抱えた湖沼、渡り鳥が多く集まる湖沼があります。人手不足や調査困難な場所などそれぞれの地域の問題が解決できるかもしれない研究開発が進んでいることを知ってもらう絶好の機会となりました。まだまだ、課題があると思いますが、「願うと叶う」そんな研究開発された最新機器を見ることができました。
そして、研究者のみなさんの目が輝き、ワクワクしている感じが印象的でした。
2017年08月29日野鳥の調査準備
十和田八幡平国立公園 村田 野人
こんにちは、十和田八幡平国立公園管理事務所アクティブレンジャーの村田です。
先週半ばから『やませ(東北地方北部の夏の冷たい季節風)』もやや治まり、十和田湖に夏が戻ってきました。残りわずかな暑さを味わいたいと思います。
一方、業務の方は秋を感じる内容が増えています。高病原性鳥インフルエンザが疑われる死亡野鳥への対応の準備です。もうすぐ(北東北は10月頃から)、カモ科の渡り鳥の季節です。
高病原性鳥インフルエンザについては、専門家から渡り鳥が関与している可能性が指摘されており、3つの国指定鳥獣保護区を管轄している当事務所でも感染が疑われる死亡野鳥の確認や常日頃からの渡り鳥の飛来状況の把握に努めています。
先日、死亡野鳥等調査用の新しい資材が届きました。それを受けて、必要な資材が十分にあるか、使用期限の切れた資材が無いか等、在庫を確認しつつ、工具箱に調査・検査に必要な一連の資材や取扱いマニュアルなどを準備し、万が一の時には車に積んですぐ出発できるように備えています。
また、9月からは国指定鳥獣保護区における渡り鳥等の飛来状況調査が始まります。カモ類が北の国に帰り、当事務所管内の昨シーズンの飛来状況調査が終わったのが5月。個人的にはつい先日のように思いますが、渡り鳥は待ってくれません。
【渡り鳥の飛来状況調査(過去のシーズンの結果)】http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/migratory/index.html
平成28-29年の冬鳥のシーズンには、全国調査を始めてから過去最多の22都道府県218件の高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されたのは記憶に新しい所です。今シーズンは同じような事態にならないことを願っています。
【国内での野鳥における鳥インフルエンザ発生状況について(平成28-29年シーズン)報道発表資料一覧】
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/press_h28_h29.html
野鳥は様々な原因で死亡します(この日記を書いている間にも、窓ガラスにぶつかったヒヨドリが保護されました)。野鳥が死んでいる(倒れている)からといってすぐに鳥インフルエンザを疑う必要はありません。ただ、細菌や寄生虫などの病原体がある事がありますので、素手では触らないでください。もし、野鳥が同じ場所で多数死んでいる場合にはお近くの都道府県、市町村役場、環境省の事務所に御連絡ください。
【死亡した野鳥を見つけたら(パンフレット)】
2017年08月28日南三陸町ラムサール条約・スノーケリング講座
三陸復興国立公園 黒田和真
こんにちは。石巻自然保護官事務所の黒田です。
8月21日、南三陸町でラムサール条約とスノーケリングの講座を開催し、
地元小学生9名が参加してくれました。
この夏は、雨が続き、海が荒れていることが多かったので、
スノーケリングができて、ホッとしました。
【スノーケリングの様子】
南三陸町の湾内は暖流と寒流の影響を受け、マコンブの南限やアラメの北限に近く、他にも様々な海藻類が生育しています。これらの海藻類は絶滅危惧種のコクガンや、ウニやアワビなどのエサにもなっています。
環境省は東日本大震災より前に、志津川湾をラムサール条約の潜在候補地として選定していました。そして現在、復興が進むなか、南三陸町は地域資源の見直しとしてラムサール条約の登録を目指しています。
今回の講座は、この貴重な海藻について学び、実際に海で覗いてみようというものでした。
連日の悪天候で海中の視界はあまり良くありませんでしたが、波際に打ち上げられた大量の海藻類を手に取って感触を確かめながら観察を行えました。
今シーズンは中々天候に恵まれていませんでした。今回が初めてのスノーケリング体験だった子どもも多かったので、いつかは晴れた日に、海に揺らめく豊かな海藻たちを覗いて欲しいなと思いました。
2017年08月25日遺産地域の看板補修
白神山地 佐々木 春佳
短い青森の夏を弘前ねぷた・五所川原立佞武多・沢登り・キャンプなどで満喫しました佐々木です。
今回は、白神山地の登山道沿いに設置している看板の補修に行ってきた様子をお伝えします。
登山口から歩いていると早々に雨が降り始め、ずぶ濡れになって補修する看板を目指します。
お弁当も雨の下でいただき、お昼過ぎに看板へ到着。
白神山地世界遺産地域は核心地域と緩衝地域に分かれ、その登山道沿いの境界には看板が設置されています。
今回は、世界遺産地域と遺産地域外との境界に設置している看板の補修です。早速、補修作業に取りかかります。
[ぐらつかないように支柱もしっかり固定して、作業完了です。]
道を引き返すころには雨は降り止み、セミや鳥の声が聞こえます。さらに気配が。
[カラ類の混群と共にアオゲラさんを見つけました。]
[気づけば私のカッパには小さなカタツムリさんが。]
[ブナに滴る樹幹流もステキでした。]
ついに、登山口近くに来たころにはブナ林に日差しが差し込みました。
天候がころころと変わる今日この頃ですが、雨の日のブナ林もまた魅力的です。
みなさんも白神山地でステキな景色を探してみませんか。
2017年08月23日井戸岳植生復元作業と八甲田ロープウェーまでの登山道巡視
十和田八幡平国立公園 伊藤 あけみ
こんにちは。
十和田八幡平国立公園管理事務所の伊藤です。十和田湖畔での勤務も4ヶ月が過ぎて、最近は慌てないで電話に出ることが出来るようになってきました。
8月も終わりに近づき、事務所の前にあるナナカマドの実が赤く色づき、風にそよぐ様子がパソコンのモニターごしに目に入ってきます。秋の訪れを感じさせる空気が漂う十和田湖畔です。
8月20日に、パークボランティアの皆さんが毎年実施している北八甲田の井戸岳の植生復元作業に同行しました。
井戸岳は、北八甲田の最高峰大岳(158 5m)からロープウェー山頂駅方向に向かう登山道沿いにある1550メートルの山です。
【北八甲田の大岳方面から井戸岳、赤倉岳方面を望む】
【三班に分かれて作業】
北八甲田のほぼ真ん中に位置する大岳避難小屋から、井戸岳に向かう途中の登山道の植生復元作業箇所において、一年に数回、植物の調査をしてデータを取っています。
登山道脇には、イワブクロ、ハナイカリ、イワギキョウが可憐に咲き、コケモモが赤い実を結んでいました。アキノキリンソウやヤマハハコも所々にありました。前年度には無かった植物が増えている箇所と無くなっている箇所があり、興味深く思いました。
【イワブクロ】
ハナイカリは山地の草地に生える植物で、花が船のイカリのような形をしていることから、このような名前がついているということです。
作業後は、八甲田ロープウェーから田茂萢岳(1324m)周辺の散策路と登山道を巡視しました。大岳~井戸岳~赤倉岳に向かう登山道を登ると、太平洋側から「やませ」と呼ばれる冷たい空気が吹いてきて、稜線にぶつかり独特の風景になっていました。
【尾根は「やませ」の冷たい空気で分断されている】
登山道は高山植物に彩られ、とても気持ちよく歩くことができます。
また、ロープウェー山頂駅付近にある田茂萢のデッキからは、天気が良ければ、大岳、井戸岳、赤倉岳が望めます。
ロープウェー山頂駅に着くと、8月1日に落成したばかりの展望デッキが迎えてくれます。
スロープが設置してあり、車椅子でも八甲田の雄大な景色が楽しめます。
【バリアフリーのデッキ】
登山される方が楽しめる多彩な登山道、ゆったりと景色を楽しめる散策路など、八甲田の魅力はまだまだたくさんあります。
これから迎える紅葉の時期はすでに満室の宿もあるようです。情報を収集のうえお越し下さい。ゴールデンウイークの時期と同様に、紅葉の時期は渋滞が予想されますので、余裕をもってお越し下さい。錦秋の十和田八甲田が今から楽しみですね。
2017年08月21日滝ノ上園地周辺でオオハンゴンソウ防除活動を行いました。
十和田八幡平国立公園 盛岡 工藤紀恵
皆様こんにちは。盛岡管理官事務所の工藤です。
夏の始まりは、猛暑を予感させる暑さでしたが、いざ梅雨が明けてみれば雨や曇りがちな天候が続き、うっすら肌寒さすら感じる盛岡です。
さて、先日の日記でお知らせしました、岩手山地区におけるオオハンゴンソウ防除活動が8/18に雫石町の滝ノ上園地周辺にて行われました。
盛岡森林管理署、雫石町、地元山岳会やパークボランティアの方々など、総勢49名の方々にご参加いただき、無事防除活動を終えました。
あいにくの雨の中でしたが、参加者が心を一つにして作業を行いました。
終了時には土砂降りとなりましたが、皆さんのお顔は晴れ晴れとしておられました。
大変お疲れ様でした。
作業を行った滝ノ上園地は、盛岡駅から車で約1時間の場所にあります。
渓谷沿いのクネクネ道を進めば、秘境感をたっぷりと味あうことができます。渓谷美を堪能した後は、
落差30mの「鳥越えの滝」が迎えてくれます。
滝壺周辺の岩からは地熱で暖められた水蒸気がモクモクと噴出していて、大地の息吹を感じることができます。これからの季節は徐々に気温が下がって、外気と岩の熱の差が大きくなってきます。すると水蒸気の量も増えて大迫力の景色に出会える可能性が高まります。
今から秋のスケジュールに組み込んでみてはいかがでしょうか。
【2016.10.21撮影】
国立公園でお会いしましょう。
2017年08月16日月山を外来植物から守ろう
磐梯朝日国立公園 澁谷 満紀
朝晩はここ羽黒も涼しくなり、秋の気配を少しづつ感じる今日この頃、
みなさまいかがお過ごしでしょうか。羽黒自然保護官事務所の澁谷です。
今日は、8月11日(金)山の日に行われた、「第12回月山を外来植物から守ろう!」に
ついてご報告します。
月山に本来生育していなかった植物から月山を守ろうという取り組みは、平成25年から
始まり、今年で5年目、今年度は3回目を迎えるこのイベント、今回は月山(姥沢側)
スキー場リフト上駅周辺での作業となりました。特に繁茂していたオオバコ、エゾノ
ギシギシ、セイヨウタンポポの3種に限定し、一般参加者、スタッフ含め36名で2時間
(休憩含む)鎌を使って除草作業をしました。
【霧雨の中作業する様子(一般の登山者と識別出来るよう腕章着用)】
【採取したたオオバコなどの計量】
こんにちは。
近頃、仕事でもプライベートでも飛び回っています。
十和田の伊藤です。
先週末は、岩手山から安比までの50キロトレイルを歩いてきましたが、仕事では8月24日に、八幡平ビジターセンター近くのオオハンゴンソウ駆除活動に参加してきました。
オオハンゴンソウは明治時代中期に園芸植物として渡来し、北海道から本州にかけて野生化しました。非常に繁殖能力が旺盛で、在来種を脅かす危険性があるため、2006年2月に特定外来生物に指定され、許可無く栽培や移動ができなくなりました。
【オオハンゴンソウ】
当日の駆除場所は、後生掛温泉付近の水路周りと後生掛温泉駐車場付近の道路脇です。
オオハンゴンソウは、地下茎と種子の両方で増えるため、バールで根こそぎ抜きとらなければなりません。
根が残ると、そこから芽を出して成長します。
【根元から新芽がでる】
また、シードバンクと言って、土の中に種子が蓄えられて発芽し、どんどん増えます。
芽を出したばかりの葉は、形状が異なりオオハンゴンソウとわかりにくいので、注意しながら探します。
【オオハンゴンソウの若芽】
【パークボランティアの皆様、自然公園財団の皆様、お疲れ様です】
傍らには、可愛らしい花々が咲いていますが、オオハンゴンソウの勢力に負けそうになっていました。
【小指の爪より小さいアカバナ】
また、付近は熊の生息地でもあり、ミズバショウの実をたべてしまった熊が、食べるものが少なくなり、ミズバショウの葉っぱまで食べてしまっていました。
【熊が食べた跡があるミズバショウの葉っぱとトンボのヤゴの抜け殻】
当日は、途中から雨になりましたが、2時間で米袋にすると5袋分を抜き取りました。
変わらぬ自然があるのは、こんな小さな努力の賜なのかもしれませんね。
駆除場所の近くにある八幡平ビジターセンター前の大沼には、コウホネがわずかに残っていて、残り少ない季節を惜しむように力強く咲いていました。
雨の中で撮影した写真を帰ってから見てみると、コウホネの花にとまっている綺麗なトンボがいて、そこに雨の滴がついている様子が見られました。
【コウホネ】
大沼は、熊の出没回数が多い場所でもあります。木道脇に熊が座ったような跡と、そこから林に歩いて行ったと思われる道ができています。散策される際には、ビジターセンターで熊の出没情報を入手したり、熊鈴や熊スプレーを携帯するなど、十分注意してお出かけください。
【熊の道】
やがて来る白い季節の前に、もう少しだけ動植物の営みを感じてみましょう。